「悪役」ペンス氏、中国に圧力 トランプ氏と役割分担
【ポートモレスビー=鳳山太成、永井央紀】日米中など21カ国・地域が参加し、パプアニューギニアで開いたアジア太平洋経済協力会議(APEC)は18日、2日間の協議を終え閉幕した。米中が通商政策を巡り鋭く対立し、首脳宣言を採択できない異例の事態となった。トランプ米大統領の代理として出席したペンス米副大統領は、中国を相手に徹底的に悪役(ヒール)を演じた。
ペンス氏は今回のアジア歴訪を通じ、国際会議の舞台であろうとお構いなしに不公正な貿易慣行から南シナ海、人権まで中国を激しく責め立てた。米中首脳会談に向けて取引(ディール)を重視するトランプ氏と役割を分担し、決定的な対立を避けながら硬軟両様で中国に譲歩を迫っている。
「中国の南シナ海進出が違法であることははっきりさせておきたい」「米国は他国を借金の海に溺れさせない」。ペンス氏はシンガポールやパプアニューギニアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などの国際会議で、中国を名指ししながら厳しい批判を繰り広げた。
10月の米シンクタンクの演説で経済から安保、人権まで幅広く中国を指弾し、トランプ米政権の対中強硬派の顔に躍り出たのがペンス氏だった。舞台が本拠地ワシントンから中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席らが目の前に顔をそろえるアジアの国際会議に変わろうとも「ペンス節」は抑えるどころか一段と挑発的になった。
トランプ政権としては首脳会談を前に強面(こわもて)のペンス氏を送り込むことで中国に強い圧力をかける一方、ギリギリの一線で決裂を避けられると見ているフシがある。ペンス氏が11月17日の演説に臨む9時間前、ワシントンのホワイトハウスではトランプ氏が「習氏をとても尊敬している」と秋波を送った。
一方、中国の李克強(リー・クォーチャン)首相も習氏もペンス氏と国際会議で同席しながら正式な会談は見送った。李氏は1分ほどの立ち話、習氏も突っ込んだやりとりは避けた。
中国への対決姿勢を強めるペンス氏と不毛な交渉をするよりも、ディール重視のトランプ氏との直談判を中国は重視しているもようだ。中国には5月の閣僚級通商協議でまとめた案がトランプ氏にひっくり返された苦い記憶がある。ある国との関係構築を図る際、その国の最高指導者にターゲットを絞ることが中国ではよくある。
中国は習氏とトランプ氏が直接話し合うしかないとの判断に傾いている。中国製品への追加関税拡大を中止させ、"一時休戦"に持ち込むのが「ベストシナリオ」(中国の外交関係者)だというが、米側の出方を見極められているわけではない。11月末の首脳会談に向けて歩み寄れる余地があるのか、腹の探り合いが水面下で激しくなりそうだ。
ドナルド・トランプ元アメリカ大統領に関する最新ニュースを紹介します。11月の米大統領選挙で共和党の候補者として、バイデン大統領と再び対決します。「もしトラ」の世界はどうなるのか、など解説します。