ジャパンタクシー、キャッシュレス拡大 LINE決済にも対応
戦略ネットBiz
ジャパンタクシー(東京・千代田)が決済手段の多様化を進めている。タクシーに設置してある広告タブレット端末に決済機能をつけた新型端末を開発したほか、NTTドコモのdポイントを支払いに使えるようにした。主力の配車アプリにライバルが次々に参入するなか、キャッシュレス決済で差別化を図る。
同社は18年秋から、後部座席に設置している広告などを表示するタブレット端末に、交通系ICカード決済などに対応した決済機能つき新型端末を開発。従来型の端末と合わせて、20年までに全国のタクシーの4台に1台にあたる計5万台への設置を目指している。
決済手段の多様化にも力を入れる。18年12月に、LINEが提供する電子決済サービス「LINEペイ」に対応した。利用者はLINEアプリを立ち上げてQRコードの読み取り画面を起動させ、車載のタブレット端末に表示させたQRを読み込ませるだけで支払いが完了する。利用者の多いLINEを使った決済に対応することで、キャッシュレス決済の裾野を広げる戦略だ。
12月末にはNTTドコモのdポイントによる支払い「d払い」への対応も始まった。1ポイントのdポイントを1円として支払いに使える。同時に乗車料金の支払いで200円ごとに1ポイントのdポイントを貯めることも可能になった。
同社が決済手段の拡大に力を入れる背景には、タクシーのキャッシュレス化の遅れがある。大都市圏ではタクシーのキャッシュレス決済に対応するタクシーは増加しており、全国タクシー・ハイヤー連合会によると、関東、関西、愛知県ではクレジットカード払いに8割程度が対応。一方で地方のタクシー会社は対応が遅れ、3~4割程度。電子マネーも全国平均で2割程度にとどまる。
同社は決済機能付きタブレット端末を地方のタクシー会社も含めた全国への展開を進める。決済手段そのものの多様化と合わせて、日本全国で現金だけでなくキャッシュレス決済によるタクシー利用を広げる戦略だ。
ジャパンタクシーは都内タクシー大手の日本交通系で、スマートフォンアプリを使ったタクシーの配車サービスを主力とする。提携するタクシー会社の増加で、現在は47都道府県で全国のタクシー総車両数のおよそ3分の1にあたる約7万台のタクシーを呼ぶことが可能になった。
ただ、配車アプリはライバルの攻勢も激しさを増している。ディー・エヌ・エー(DeNA)は12月から配車アプリ「MOV(モブ)」で参入。日清食品と連携した0円タクシーの運行で話題をさらった。ソニーもタクシー大手と組んで配車アプリの新会社を18年5月に設立。サービス開始に向けた準備を進めている。
ジャパンタクシーは対応台数や対応エリアの広さなどでライバルに先行するが、競争環境の激化は避けられない。配車だけでなく、決済手段を広げてライバルとの差別化を進める狙いがある。
(福冨隼太郎)
[日経MJ2019年1月16日付]