富士通、配置転換5000人規模 ITサービス注力で
富士通は26日、2020年度をめどにグループ全体で5000人規模を配置転換する方針を示した。対象は人事や総務、経理などの間接部門で、成長分野であるIT(情報技術)サービス事業に振り向ける。非中核と位置付ける製造分野の切り離しも進め、事業の選択と集中を加速する。
都内で開いた経営戦略説明会で発表した。対象となる間接部門にはグループ全体で約2万人の社員がいる。研修を通じて営業やシステムエンジニアなどITサービスに関わる職種への転換を促す。グループ会社の間接機能を富士通本体へ集約することも検討する。
塚野英博副社長は「全社を横断的に見ると、専門的な営業やコンサルティング業務などで人が足りていない。コストの点からも適材適所な活用を考えたい」と話した。
富士通は非中核に位置付ける製造分野を切り離し、経営資源をシステム開発などのITサービスに集中させる構造改革を進めている。18年に入ってからは3月に携帯端末事業を投資ファンドに、5月にはパソコン事業を中国のレノボ・グループに譲渡した。
田中達也社長は15年の就任時に「連結営業利益率10%以上」「海外売上高比率50%以上」などの目標を掲げた。しかし、18年3月期の営業利益率は4.5%にとどまり、収益力の向上が急務になっていた。海外事業についても「まず利益を上げられる素地を作ることが優先」(田中社長)として、売上高比率50%の目標は今回取り下げた。
26日には合わせて、パソコンやサーバーを生産するドイツのアウクスブルク工場(バイエルン州)を20年をめどに閉鎖することも発表。周辺の関連拠点を含めて約1800人が対象になる。田中社長は「海外事業は製品製造への依存が強く、不採算拠点が足を引っ張っていた」とした。
富士通が主力に据えるシステム開発などのITサービス関連事業は売上収益のうち8割弱を占める。18年4~9月期のITサービスの営業利益率は3.4%と前年同期から0.2ポイント改善。製造業や流通業からの引き合いが強かったのが奏功したが、同業他社と比べると成長速度は遅い。
ITサービスを主力とする野村総合研究所の足元の営業利益率は13.8%と前年比で0.6ポイント上回る。富士通は開発の上流段階の営業で出遅れており、AI(人工知能)やあらゆるモノがネットにつながるIoTなどの新しい需要も取り込み「付加価値の高いサービスへの変革をめざし利益率向上につなげる」(田中社長)必要がある。
さらに次世代の無線通信規格「5G」の基地局機器の開発と営業で、世界2位のスウェーデン・エリクソンと提携することも正式に発表。田中社長は「1社でやっていく時代は終わった。他社と組みながら技術とサービスをどう売り込んでいくかが課題」と話した。
ITサービス、海外事業ともに課題は多い。打ち出した施策の実行のスピード感が求められる。
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富士通が26日発表した2018年4~9月期の連結決算(国際会計基準)は純利益が前年同期比87%増の811億円だった。6月に企業年金制度を企業の追加負担が生じない制度に変えたことによる一時的な利益が寄与した。本業ではシステム開発が民間、公共分野ともに伸びた一方で、国内の携帯電話基地局の投資抑制などでほぼ前年並みの利益水準だった。
売上収益は5%減の1兆8345億円だった。パソコンや携帯端末事業を譲渡したことが880億円の減収要因となった。システム開発の売上収益は6%増の4944億円。国内での拡大により、4~9月としては過去最高の売上高だった。ただ、「海外での新規案件の拡大は期待通りでない」(塚野副社長)としている。