慶大、脊髄損傷直後の患者治療へ治験 たんぱく質を患部に注射
慶応義塾大学の岡野栄之教授らは16日、事故などで脊髄が傷ついた直後の患者を治療する臨床試験(治験)を月内にも始めると発表した。血管や神経を伸ばす働きがある肝細胞増殖因子(HGF)と呼ぶたんぱく質を患部に注射する。首の脊髄を損傷後66~78時間以内の48人が対象になる。2016年10月まで国内2カ所の専門病院で効果を確かめる。
ラットやサルを使った実験では、HGFが傷んだ細胞が死ぬのを抑え、神経や血管を伸ばしたという。手が丸まったサルにHGFを投与すると8週間後には指を動かせるまでに改善した。臨床試験では後遺症をどれだけ減らせるかを見極める。
事故やけがなどで脊髄を損傷する患者は年間5千人で、そのうち8割強の患者に治療の効果が期待できるという。これまで炎症を抑えるステロイド薬で治療していたが、効果が限られていたという。
岡野教授らは今回の治療法とは別に、損傷後2週間以上経過した脊髄損傷患者に対し、ヒトのiPS細胞を使い、臨床研究を17年にも始める。