歴代首相の言葉引用、野党から批判 施政方針演説
野田佳彦首相は就任後初めてとなった24日の施政方針演説で、約40分の所要時間のうち約3割を消費増税を含む社会保障と税の一体改革に絡む内容にあてた。低姿勢をアピールしたこれまでのスタイルを転換し、強い口調で与野党協議を迫る意気込みもみせた。ただ、与党議員からの拍手は総じてまばらで、首相との温度差も出た。
「政治を変えよう。共になし遂げよう」。演説のヤマ場は終盤、首相が声のトーンを高めて与野党協議を呼びかけたくだりだ。衆院での演説では野党議員から「代えるのは首相だ」などのやじが飛び交った。野党が多数を占める参院では傍聴席から首相の声が聞き取れないほど騒然となった。
一方、与党側は首相が震災や原発への対応を訴えていた時から比較的静か。一体改革のくだりにさしかかっても、拍手はそれほど多くなかった。
異例だったのは、自民、公明連立政権下の福田康夫、麻生太郎両元首相の施政方針演説の一節を引用した点だ。参院で野党が多数を持つ状況で、話し合いを提起した福田氏や消費増税の必要性を強調した麻生氏を引き合いに与野党対話を迫った。
野党は演説後、一斉に批判した。自民党の谷垣禎一総裁は消費増税への意欲について「2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)への虚心な反省が無い」などと酷評。公明党の山口那津男代表も「自らを深く反省した上で野党に呼びかけるというのがあるべき議論の仕方だ」と指摘した。
他の野党からも「美辞麗句で増税を正当化しようとしている」(みんなの党の渡辺喜美代表)、「真剣に説明していく姿勢や中身が全く無い」(共産党の志位和夫委員長)などの声があがった。
演説を引用された福田氏は記者団に「いいことも言っているが、僕はひどい目にあった」と当時の野党・民主党の対応を批判。麻生氏も景気対策の取り組みに不満を示し「まるでワサビがきいていないすしだ」。そのうえで「いいところ取りをされた。抱きつかれてクリンチされた感じだ」と不快感を示した。