ダメ出しより「いいね!」 「ほめ達」検定受けてみた
C世代記者 駆ける 第2回
交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブックの主要なコミュニケーション手段である「いいね!」。コンピューター(Computer)を傍らに育ち、知人とのつながり(Connected)を重視するC世代の意思疎通手法の1つだ。C世代のやる気を引き出したい企業の管理職らが受講するセミナーで、相手をほめる心構えを養う「ほめる達人(ほめ達)検定」を受けてみた。
記者が受講したのは昨年12月上旬、都内で開かれた3級検定セミナーだ。主催会社のシーズ(大阪市)の西村貴好社長(43)が「ほめるということは、人、モノ、出来事の価値を発見することです」と解説する。
同社が大学教授と共同で、近畿地方の大企業で働く約1千人の社員を対象に調査した内容を西村さんが紹介した。半分の社員を部下を積極的にほめる管理職のもとで、もう半分をあまりほめない管理職のもとで働かせたところ、ほめる管理職の下で働く社員の方が、企画の提案などが積極的になる傾向がみられたという。「35歳以下の若手社員は『ダメ出し』の影響が大きくみられました」。約50人の参加者が一斉にうなずく。
前半の講義に続いて、後半は3級の検定試験。受講者は全員合格で、前半の講義の内容を踏まえて、ほめることに対する理解を深めるペーパーテストだ。
第1問は「自分が言われてうれしいほめ言葉」を書き出すこと。5分以内で30個を書き出すのが目標だ。頑張った、よくやった、よく勉強している、かわいい、気がきく、素直だ、よく働く、しっかりしている……すらすらと思い浮かばず、記者は20個を書き出すのが精いっぱい。アタマが硬くなり、ほめ言葉が乏しいことを痛感した。この日、一番多くほめ言葉を思い付いた参加者は61個だった。
第2問は「気が弱い」「空気を読めない」など、8つの短所を長所に言い換えること。制限時間は3分。記者は「気が弱い」を「繊細な心の持ち主」に、「空気を読めない」を「周りに臆せずに自分の意見を主張できる」と言い換えてみた。こうして言い換えてみると、一見マイナスな要素も案外違う見方ができる。
第3問は、5分間で「普段あまりほめない人の素晴らしい点を探すこと」。西村さんが「会社の上司などを思い浮かべてみてください」と声をかけるので、ある上司を思い浮かべてみた。
「厳しく叱責する」「作業が進んでからダメ出しする」……素晴らしくないイメージばかりが思い付く。それぞれを「部下の積極的な姿勢を引き出そうと、故意に厳しい言葉をぶつけている」「完成度の高い仕事を求めている」に置き換えてみたら、素晴らしいことのように思えなくもない。西村さんの「ほめることは、あら探しをやめて、プラスの面を探して光を当てることです」という説明が少し納得できた。
高度経済成長を知らず成功体験の乏しい若者と、年長世代の溝は簡単には埋まらない。変化の激しい時代には、企業や個人の過去の成功パターンも通用しない。自分が正しいと思うことに照らし合わせて『ダメだし』するのではなく、物事を多面的にとらえて『いいね!』評価しあう。ほめるということは、C世代の時代に柔軟に対応するための思考方法の1つなのかもしれない。
(森川直樹)