社会保障給付、過去最大の99.9兆円 09年度
国立社会保障・人口問題研究所は28日、2009年度の社会保障給付が08年度比6%増の99兆8507億円となり、過去最高を更新したと発表した。年金、医療、介護の各分野で高齢者向け給付が増えた。一方で、保険料収入は同3.5%減と過去最大の落ち込みだった。10年度以降の社会保障給付は100兆円を突破するのは確実で、給付に見合った財源の確保が課題だ。
社会保障給付は税金や保険料を元に支払われた「年金」「医療」「介護」「子育て」などの費用総額。社人研は国際労働機関(ILO)が定めた基準に従って、政府統計を使って毎年集計している。
09年度の社会保障給付は、1995年度の7%以来の高い伸びになった。伸び率が特に大きかったのは「介護」で、前年度比6.7%増の7.1兆円だった。介護報酬で3%の増額改定したことが影響した。「年金」は4.4%増の51.7兆円、「医療」は4.2%増の30.8兆円だった。
給付額は小さいが、リーマン・ショック後の雇用情勢の悪化で「失業」は前年度比2倍の2.5兆円となった。「生活保護」も14%増の2.7兆円だった。
一方で、財源をみると、保険料の落ち込みが深刻だ。厚生年金保険料や健康保険料は月収に応じて徴収されるので、賃金が減ると、保険料も減ってしまう。保険料収入は3.5%減の55.4兆円だった。保険料の落ち込みは公費で賄っている状況で、公費は19%増の39.1兆円だった。
社会保障の規模を示す国民所得比は29.4%とこちらも過去最高を更新した。給付が増えているのに、所得が落ち込んだためだ。課題は高齢化に伴って増える給付と負担とのバランスをどう取るかだ。給付を抑制したり、消費増税などで国民にさらなる負担を求めたりしないと、社会保障制度そのものが揺らぐおそれがある。