死刑執行19年ぶりゼロ 2011年、確定囚129人
今年は1992年以来19年ぶりに死刑執行がゼロになることが確定した。昨年7月以来、執行がない一方、今年は昨年より12人多い21人の死刑判決が確定し、未執行死刑囚は過去最多の129人に達した。オウム真理教事件の刑事裁判終結を受け、遺族らの間で松本智津夫死刑囚(麻原彰晃、56)らの執行を求める声が上がるなか、執行に慎重姿勢を取る平岡秀夫法相の判断に注目が集まっている。
「死刑制度の是非を考えている間は当然、(執行を)判断できない」。平岡法相は9月の就任会見で、当面、死刑執行の考えがないことを明かした。その後、「個々の問題について自分で考えて結論を出す」と執行の可能性に初めて言及したが、慎重な態度は変わらない。異例の「執行停止」を宣言していた前任の江田五月法相の姿勢を踏襲した形だ。
刑事収容施設法では12月29日から1月3日までは死刑を執行しないことになっている。今年は今月28日までに1件も執行されておらず年間死刑執行ゼロが確定した。
過去に年間の死刑執行がゼロだったのは90~92年の3年間。真宗大谷派の僧侶でもある左藤恵元法相が執行命令書への署名を拒否した。
最後の死刑執行は千葉景子法相時代の昨年7月。民主党政権下での執行はこの時の1件2人だけで、2008年に15人の死刑を執行したことがある自民党政権下と比べ、激減している。
一方、未執行の死刑囚は増加の一途をたどっている。00年は53人だったが、04年以降、死刑判決の確定が相次ぎ、07年には107人まで増加。市民が量刑に関与する裁判員裁判の死刑判決も相次いでいる。
今月、オウム真理教事件の刑事裁判が遠藤誠一被告(51)の死刑確定とともにすべて終結した。刑事訴訟法は、判決確定から6カ月以内に法相は死刑執行を命じなければならないと定める一方、「再審請求中や共同被告人の判決が確定するまでの期間は6カ月間に算入しない」とも規定。このため、これまでオウム事件に絡む死刑執行は見送られてきた。
裁判終結を受け、法務省内では「積極的に執行を見送る理由はなくなった」(同省幹部)との意見が多く、被害者・遺族の間では「早期執行で早く事件に幕を引きたい」(遺族の一人)と早期執行を求める声も上がる。
一方で、オウム真理教被害対策弁護団やオウム真理教家族の会(旧称・被害者の会)は「松本智津夫死刑囚以外の死刑は執行すべきでない」との声明を発表。日本弁護士連合会は「死刑廃止に向けて全社会的な議論をすべきだ」として当面すべての執行停止を求めている。