パソコン世界出荷、20%以上減少も タイ洪水で
12年1~3月、米調査会社予測
【シリコンバレー=奥平和行】米調査会社のIDCは10日、タイの大規模洪水の影響により2012年1~3月期のパソコン世界出荷台数が同社の当初予測より20%以上落ち込む可能性があると発表した。パソコン販売は景気悪化や多機能携帯端末(タブレット)などとの競争激化により伸び悩んでおり、メーカー各社は一段と苦しい状況に追い込まれそうだ。
IDCは当初、12年1~3月期のパソコン世界出荷台数が前年同期より約8%多い8870万台になると予想していた。同社によると11年1~6月期時点で、パソコンの主要部品のひとつであるハードディスク駆動装置(HDD)は世界生産の40~45%をタイが占めていた。同国の生産能力の5割程度が洪水の影響を受けており、供給難によりパソコン生産が落ち込む。
一方、年間最大のかき入れ時である年末商戦に重なる11年10~12月期については、出荷が既に終わっていたり、HDDの在庫が一定量あったりするため、出荷台数は当初予測の90%以上の水準に達するとみている。また、品不足から上昇基調にあるHDDの価格は12年6月までに落ち着き、同年後半には生産量が通常に近い水準に戻ると予測している。
タイではHDDで世界シェアの約3割を握る米ウエスタン・デジタルの現地工場が冠水し、10月中旬から生産を停止している。同社は10~12月期の出荷台数が前年同期の半分以下に減る見通しを示し、ジョン・コイン最高経営責任者(CEO)が「生産能力が元に戻るのは数四半期先」と説明していた。
こうした事態を受け、「業界としてHDDの供給が不足するのは確かだ」(米アップルのティム・クックCEO)など、パソコン業界では主要部品の供給が滞ることへの懸念が広がっている。