首相、消費増税準備法案「野党反対でも提出」
野田佳彦首相は8日の衆院予算委員会で、消費税率引き上げの準備法案について「多くの政党が認識を共有してもらえればありがたいが、そうでない場合でも閣議決定し法案を提出することは政府・与党の責任だ」と述べ、来年3月までに国会に提出する意向を強調した。安住淳財務相は年末の来年度税制改正大綱に、引き上げ方針とあわせて低所得者対策を盛り込む考えを示した。
首相は3日の20カ国・地域(G20)首脳会議で、「2010年代半ばまでに消費税率を段階的に10%までに引き上げる」方針を表明した。
首相は予算委で、消費税率の引き上げについて「実施時期もいろいろ検討し、法案の中に書き込んでいく」と述べ、消費増税準備法案に引き上げ時期を明記する考えを示した。
自民党の質問者には「自民党が与党時代から言ってきたこととの整合性がある。増税を先送りできないと、同じ認識を持てるのではないか」と訴えた。「与野党で胸襟を開いて協議し、前進させるようお互いに努めたい」とも呼びかけた。
財務相も「低所得者対策や逆進性の問題の議論を早急に開始して、年末の税制改正大綱をまとめるまでに何とかしたい」と語り、野党に理解を求めた。
しかし、自民党の反応は冷ややかだった。野田毅税調会長は「消費税率引き上げ法案を閣議決定すると国際公約したのか」とただした。6月に菅直人前首相が民主党内の反対派に配慮し、消費税引き上げ方針の閣議決定を見送った経緯があるためだ。
自民党は昨年7月の参院選公約に「当面10%」の消費増税を明記。野田毅氏は党総務会でも10%にする方針を党議決定済みとして「引き上げようとするならば閣議決定するのが当然の順序だ」と首相の呼びかけを突っぱねた。閣議決定前では税率や実施時期の協議には応じられないというわけだ。
自民党内には消費増税の協議に慎重な向きもあるため、まずは民主党内の議論を先行させて相手を揺さぶる思惑がある。 自民党は消費増税を衆院解散・総選挙と絡めている。8日の予算委でも茂木敏充政調会長が「民主党政策集は消費税率5%を維持するとしており、政策を百八十度転換した。法案の成立を期すなら、国民に信を問うべきだ」と強調。法案提出前の解散を求めた。
首相は法案成立前の解散を拒んだが、野党第1党の協力なしに消費増税法案を成立させるのは難しい。「できなかったら責任を取る道を選ばなければいけない。解散か、内閣総辞職のどちらかだ」と覚悟を問われた首相は「これまで言ってきたことを実現する責任をしっかり果たしていく」と答えた。