「脱原発、核管理揺るがす」 日経・CSISシンポ
日本経済新聞社と米戦略国際問題研究所(CSIS)は8日、「東日本大震災、トモダチ作戦と日米同盟の未来」と題し、共同で第8回日経・CSISシンポジウムを東京・大手町の日経ホールで開催した。米側出席者は原子力の平和利用を進める日本の「脱原発」は世界の核管理体制を危険に陥らせると指摘。パネルディスカッションでは日米が共同で、中国の軍事的な影響力拡大に歯止めをかけるべきだとの意見が目立った。
3月11日の東日本大震災で福島第1原子力発電所が被害を受けたが、ジョン・ハムレCSIS所長は「日本が原子力(利用)をやめるのは誤り」と指摘した。中国、インドなどで原発新設計画が相次いでいることを背景に「核拡散防止条約(NPT)体制で責任感の弱い国に主導権を奪われかねない。日本の脱原発は世界をより危険にする」と語った。
ウィリアム・ペリー元米国防長官も「日米は原子力分野で前面に立ち、安全な運転手順、規制をつくるべきだ」と主張。北朝鮮、イラン、パキスタンなどの動きを念頭に「民生用原子力開発を隠れみのにした核兵器開発に留意すべきだ」と注意を促した。
中国が領土問題で強硬姿勢を示し、軍事費を膨張させている東アジア情勢の変化に対しても日米協調を訴える声が目立った。ジョセフ・ナイ元米国防次官補は「日米が関係を深めることで中国の(アジア地域での)支配を難しくし、中国を協力に向かわせる環境づくりが重要だ」と述べた。
リチャード・アーミテージ元米国務副長官は「日本が一流国であり続けるために集団的自衛権の行使で国際的な活動に関与してほしい」と期待を示した。
震災後に米軍が自衛隊に協力してがれき除去など被災地を支えた「トモダチ作戦」について日本側出席者から「中長期的に日米関係を支える。日本人は忘れない」(久保文明東大教授)などと評価する声が相次いだ。斎藤隆前統合幕僚長は米軍と自衛隊の連携を評価しながらも「日本側の海上輸送能力に限界があった」と問題点を指摘した。