放射性物質、コメ・牛肉に猶予期間 食品に新基準値
厚生労働省は22日、薬事・食品衛生審議会の放射性物質対策部会に、食品に含まれる放射性セシウムの新基準値を提示し、了承された。3月に策定した暫定規制値より上限を厳しく設定。一般食品は1キログラム当たり100ベクレル、新設する「乳児用食品」と牛乳は半分の同50ベクレルとし、飲料水は同10ベクレルと最も低くした。乾燥状態で流通する食品を検査するルールも変更した。同省は、来年4月に適用する方針。
コメと牛肉、大豆は市場などの混乱を避けるため適用まで猶予期間を設ける。厚労省はコメと牛肉は来年9月30日まで半年間、大豆は同12月31日までと提案。部会で「消費者が混乱する」との意見が出たため今後、農林水産省と協議し詰める。
新基準値は食品を4つに分類。まず「飲料水」を世界保健機関(WHO)の指標を参考に1キログラム当たり10ベクレルと現行の20分の1に厳しく設定。厚労省は「料理などにも多く使うため、より安全に判断した」としている。
これまでの「野菜類」「穀類」「肉・卵・魚・その他」は「一般食品」に統合し、暫定規制値の5分の1を上限とした。「飲料水からの被曝(ひばく)を除き、妊婦のほか、0歳、1~6歳など5つに分けた年齢区分で最も食べる量が多い13~18歳の男性の上限値(同120ベクレル)の端数を取った」(同省)という。
「乳児用食品」は、「乳児用」の表示許可を受けた粉ミルクのほか、ベビーフードや乳児向け飲料、栄養食品など。大人より放射線の影響を受けやすいとして、上限は一般食品の半分にした。
従来の「牛乳・乳製品」は新分類では「牛乳」としたが、乳製品のうち、乳固形分が多い乳飲料は同じ扱いとする。一方、乳飲料以外の乳製品(乳酸菌飲料、発酵乳、チーズなど)は今後は一般食品と分類する。
部会では「乳児の粉ミルクの新基準値は同50ベクレルで飲料水より高い」との指摘があったが、同省は「7倍程度に薄めるため、実際は飲料水より厳しい」と説明した。
同省によると、新基準値の上限で食べ続けた場合でも年間被曝線量は各年代で0.8~0.3ミリシーベルト程度で、食品からの被曝上限とした「年1ミリシーベルト」を下回る。同省は「実際の被曝はさらに低い」とみている。
一般食品のうち、乾燥状態で流通する食品の検査ルールも変更。茶などは乾燥状態で規制していたが、お湯などを加えて飲む状態で飲料水として規制する。乾燥させたキノコ、海藻類、魚介類、野菜類など水で戻して食べる食品は、乾燥状態と戻した状態の両方で一般食品として規制する。