金正日総書記が死去、「心筋梗塞」 金正恩氏が後継へ
【ソウル=島谷英明】北朝鮮メディアは19日正午、一斉に「特別放送」を流し、朝鮮労働党の金正日総書記(国防委員長)が17日死去したと伝えた。69歳だった。父、金日成主席の死去を受けて1994年に北朝鮮の最高指導者に就き、周辺国の反対を無視して核開発を進めた。2002年9月の小泉純一郎首相(当時)との日朝首脳会談では、拉致問題を認めて謝罪したが、問題はその後も未解決のままだ。
金正日氏は軍部や側近を重用して体制を固めつつ、「核カード」を駆使した外交術で多くの国際支援を得た。
独裁体制を敷いた最高権力者の死去により、北朝鮮情勢は重大局面を迎える。北東アジアの安全保障体制に大きな影響を与えるのは必至だ。
北朝鮮メディアによると、金正日氏は17日午前8時半、現地視察の列車の中で死去した。死因は心筋梗塞で、葬儀は12月28日に平壌で開かれる。金正日氏は一時は脳卒中にかかったほか、心臓病や糖尿病も患っていた。
朝鮮中央テレビのアナウンサーが読み上げた訃告は「今日わが革命の陣頭には、わが党と軍隊と人民の卓越した指導者である金正恩同志が立っている」とし、三男の正恩(ジョンウン)党中央軍事委員会副委員長(28)が後継者であることを強く訴えた。
ラヂオプレスによると、19日の中国中央テレビは北朝鮮国営の朝鮮中央通信の報道として次のように伝えた。朝鮮労働党中央委員会、朝鮮労働党中央軍事委員会、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会、最高人民会議常任委員会、内閣は「すべての党員、人民軍の将兵ならびに人民に告げる書」を発表し、すべての党員、人民軍の将兵ならびに人民は尊敬する金正恩同志の指導に忠誠を尽くし、党並びに人民軍および人民は団結を維持するよう要求した。
金正日氏死去後の北朝鮮では、今のところ内部抗争やクーデターの兆候は確認されていない。当面は軍部中心の集団指導体制を取る可能性もある。
日朝関係では、金正日氏は04年5月にも小泉首相と会談したが、拉致問題で日本の世論は早期の国交正常化を支持せず、その後、日朝関係で大きな進展はなかった。
94年に金日成主席が死去した際には、北朝鮮は1日半たってから死去の事実を発表。同時に追悼大会の日程や葬儀委員長に後継者の金正日氏が就くことなどを発表した。