スマホ向けコンテンツ参入、ドコモ・放送・出版続々と
NTTドコモは29日、民間放送各社と組み、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)向けコンテンツ配信に乗り出すと発表した。来年4月から独自編成のドラマやニュースを提供する。角川書店なども新作書籍の閲覧サービスを開始。スマホ向けコンテンツ配信が本格化するが、収益の柱となるには課題も多い。
コンテンツ配信を手がけるのは、ドコモ子会社のmmbi(東京・港、二木治成社長)。番組の名称は「NOTTV(ノッティーヴィー)」で、月420円で既存の「ワンセグ」の約10倍の高画質の放送を3チャンネルで楽しめる。
提供するのはドラマやニュースなど。スマホに番組を自動保存する「蓄積型放送」の機能も盛り込み、電子書籍やゲームも楽しめるようにした。2012年上期中に対応のスマホ4機種、タブレット型端末3機種を投じ、他社と差異化を図る。
携帯電話市場は飽和状態にある。ドコモは通信事業だけでなく「総合サービス企業」への転身を急いでおり、スマホ向けコンテンツ配信を新たな収益の柱にしたい考え。
スマホ向け配信サービスはドコモと組む民放各社の経営も変える。広告減少で放送収入が低迷する各社にとって、スマホ関連は有力な新規事業。「新たなコンテンツ市場は有望な事業」とTBSホールディングスの石原俊爾社長は指摘する。
出版社も同様だ。角川書店は同日、12月に発売する作家の夢枕獏氏の新作を単行本だけでなくスマホでも読める電子書籍で同時に発売すると発表した。「紙と電子はそれぞれに良さがあり、一緒に出すのが一番良い」と角川歴彦会長は言う。
各社が有望視するスマホへのコンテンツ配信だが課題も多い。米アップルやグーグルなど海外大手が配信で有力な基盤を持ち、ユーチューブなどの動画サービスも数多くあるためだ。
ドコモは新放送の初年度の契約者100万件を目標に据える。同社はこれまで月315円の動画配信サービス「BeeTV」で180万件以上の契約者を獲得してきたが、携帯電話販売店の販売促進によるところが大きい。「新サービスの普及は同様の策がカギを握る」(証券アナリスト)
ドコモの山田隆持社長は「海外展開もしたい」と語るが、コンテンツは日本独自の規格で配信する。新興国で提供するには日本方式の採用が必要だが、受け入れられるかは未知数だ。
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