印・ベトナム、南シナ海で資源開発 中国反発強める
【北京=森安健】南シナ海で勢力を拡大する中国と各国の対立が一段と激しくなってきた。インドがベトナムと南シナ海で天然ガス・油田の共同開発を推進することが明らかになり、中国が強く反発している。中国と南沙諸島などの領有権問題を抱えるベトナムは米国、ロシアにも接近し、中国をけん制してきた。インドがこれに加わったことで、大国の駆け引きが激化しそうだ。
インド紙が15日にインド国営石油天然ガス公社(ONGC)とベトナム国営ペトロベトナム(PVN)がベトナム沖の「127」「128」両鉱区の探査・開発を推進すると報じた。両国は2006年に鉱区の開発の契約を結んだが、中国が「自国の権益」として反発してきた経緯がある。
南シナ海のほぼ全域の領有権を主張する中国はこの報道に激しく反発。中国外務省の姜瑜副報道局長は15日の記者会見で「中国はいかなる国でも中国管轄の海域で原油、ガス探査を進めることに反対する」と語気を強めた。一方、インド外務省報道官は15日、「ベトナムを含む各国とのインドの協力は国際法に基づいている」と応酬した。
インドのクリシュナ外相はベトナムを訪問し、16日にミン外相と会談した。インドからの報道によれば、両外相は安全保障、通商、経済面で2国間協力を推進する共同宣言を発表した。鉱区開発についても協議したとみられる。
中国の反発は収まらない。人民日報系の「環球時報」は17日付1面トップで「インドがかたくなに南シナ海での探査へ」と報道。同紙は前日の社説でも「インド側が説得に応じずに開発を続けるなら、外交及び外交以外の手段で目覚めさせなければ」と主張していた。
インドがベトナムとの連携を強調する背景には、資源を確保すると同時にインド洋進出を加速する中国をけん制する意図があるとみられる。中国はミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、パキスタンの港湾整備支援など、インドを封じ込めるような「真珠の首飾り」戦略を進め、インドは強く警戒している。
インドとベトナムは安全保障面での協力も強化。7月にはインド海軍がベトナムに寄港、インド側はベトナム海軍の支援にも乗り出している。ベトナムは米ロとの関係強化にも動いており、南シナ海に大国を関与させることで中国の影響力を均衡させる狙いがあるとみられる。