ムーディーズ、米国債格下げを当面見送り
米格付け会社のムーディーズが米国債のトリプルAを格下げせず、ネガティブ・アウトルックにとどめる可能性ありと発表した。
"8月2日までに債務上限につき合意が得られなくても、国債利払いに優先的にカネを回す"ことができるとの読みだ。
次の国債利払いは8月15日の310億ドル(約2兆3千億円)である。
これで当面、格下げは回避できそうだが、中期的には問題の先送りに変わりはない。
とはいえ、来週8月第1週のマーケットに関しては、投資家のリスク選好度が若干でも戻る可能性が出てきた。
一方、債券市場では米国債買いが加速中だ。前回の本欄執筆時点では10年債の利回りが2.95%。それが今や2.79%だ。
前回、本欄にて詳述した、投資マネーによる「flight to liquidity(流動性への逃避)」が続いている。
特に中国が更に米国債保有を積み上げている。たとえ格付けがAAになったところで、日本や欧州の国債に比べて大きく劣後しているわけではないとの判断のようだ。
なお債務上限問題で切羽つまった米国政府が国保有の建物などの"ガレージ・セール"も考慮中のようだが、市場のスズメたちは、ラシュモア山国立記念公園売却も検討せよ、など容赦ない。本欄で"アクロポリス神殿の売却迫る独国民感情"(6月27日付)について書いたことを思い出す。
そのうちに公的金準備も売却せよ、などの議論も出るかもしれない。
ワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて貴金属ディーラーとなる。同行で南アフリカやロシアなどから金を買い、アジアや中近東の実需家に金を売る仲介業務に従事。さらにニューヨーク金市場にフロアトレーダーとして派遣され、金取引の現場経験を積む。その後東京金市場の創設期に参画。ディーラー引退後、WGCに移り、非営利法人の立場から金の調査研究、啓蒙活動に従事。金の第一人者であり、素人にもわかりやすく金相場の話を説く。