中国の温首相「高速鉄道の信頼失墜」 事故現場で会見
中国の温家宝首相は28日午後、浙江省温州市で23日夜に発生した高速鉄道事故の現場に入り、記者会見を開いて「安全を失えば高速鉄道の信頼も失う」と指摘した。鉄道省が急ピッチで進めた高速鉄道網の整備で安全性が軽視されてきたことを暗に認めた形だ。
中国政府の首脳が事故・災害現場を慰問する際に内外のメディアとの会見に応じるのは極めて異例。事故問題の誤りを認め、当事者である鉄道省への責任追及を明言することで、批判が政府全体に向く展開を避けて事態収拾を狙ったようだ。温首相は自身が病床から「医師にむりやり許可をとって」現地入りしたとも語り、強い姿勢で対応する構えを強調した。
鉄道省に事故原因の隠蔽疑惑があることには「民衆の疑問に正しく答えるべきだ」と原因究明の徹底を表明。「背後に腐敗があれば追及の手は緩めない」とも強調し権限の強さから"独立王国"とやゆされてきた鉄道省の利権構造にメスを入れる考えも明らかにした。
事故が高速鉄道網の整備や米国などへの海外輸出計画に与える影響には具体的な言及を避けた。(上海=戸田敬久)