中国、事故賠償の早期合意に奨励金　「幕引き狙い」批判も

【上海=菅原透】中国国営通信の新華社は26日夜、温州市で起きた高速鉄道事故の遺族に対する死亡者1人あたりの賠償金の基準額を50万元（約610万円）にすることを当局が決めたと報じた。各種規定と「人道主義精神」に基づく措置という。ただ当局は賠償問題の早期の幕引きを狙っているとの批判も出ており、遺族が受け入れるかどうかは不透明だ。

26日には当局が家族1人を失った一遺族と50万元の賠償金を支払うことで基本合意していた。早期の受け入れを条件に数万元の「奨励金」を含む額という。当局の基準はこの遺族との妥結額をベースにしているとみられる。

もっとも、インターネット上では「奨励金とは何事だ」「人命はこんなに安いのか」などと批判的な書き込みが相次いでいる。中国メディアも「死亡者1人あたり100万元以上は必要だ」との弁護士の話を紹介。今後、賠償交渉が難航する可能性もある。

一方、中国当局は26日、事故直後に土中に埋めた先頭車両を含め、現場に残されていた車両や残骸を搬出。今後、専門チームを中心に本格調査に乗り出す方針だが、車両はショベルカーなどで粉砕されるなどしており、事故原因の究明につながる調査ができるかは不透明だ。