民主新代表に野田氏 決選投票で海江田氏を逆転
菅直人首相(民主党代表)の後継を決める党代表選は29日午後、投開票し、決選投票の結果、1回目で2位だった野田佳彦財務相(54)が最多得票を挙げた海江田万里経済産業相(62)を破り、新代表に選ばれた。新代表は30日の衆院本会議で第95代、62人目の首相に指名される。2009年の政権交代後、2年足らずで3人目の首相となる。
決選投票は野田氏が215票、海江田氏が177票だった。有効投票数は392。無効は3だった。野田氏は菅政権で主流派に属する前原誠司前外相(49)らとの2位以下の連合が奏功。党内最大議員グループを率いる小沢一郎元代表や鳩山由紀夫前首相の全面支援を受けた海江田氏に逆転勝利した。
民主党は29日午前11時に都内のホテルで党大会に代わる両院議員総会を開き、党所属国会議員のみの投票で代表選を実施した。衆参両院の所属議員407人のうち党員資格停止処分を受けた小沢一郎元代表ら9人を除く398人に投票権があり、395人が投票した。横路孝弘、西岡武夫衆参両院議長と松本龍前復興担当相の3人が棄権した。
1回目の投票では、海江田氏が143票を集めてトップに立ったが、有効投票の過半数に届かず、102票を集めた野田氏との決選投票に持ち込まれた。野田氏には1回目の投票で3位につけた前原氏の陣営のほか、4位の鹿野道彦農相(69)陣営などの支持が集まった。
1回目の投票では、前原氏が74票、鹿野氏が52票、馬淵澄夫前国土交通相(51)が24票を獲得した。
野田氏は同日午後、直ちに党役員人事に着手。30日には衆参両院で首相指名選挙を実施し、新首相に選出される。同日以降、組閣作業を本格化させる。
野田氏は新首相就任後、東日本大震災からの本格復興に向けた11年度第3次補正予算案の早期成立を目指す。参院で野党が多数を占める「逆転国会」を乗り切るためには自民、公明両党など野党の協力が不可欠。09年衆院選マニフェスト(政権公約)の見直し、社会保障と税の一体改革や復興に必要な増税の扱いが課題となる。
野田氏は衆院当選5回。松下政経塾の1期生で1993年に日本新党から立候補して初当選した。民主党結成当初から前原氏と並ぶ若手のリーダーと目されてきた。菅内閣で財務相に就任。社会保障と税の一体改革のとりまとめに奔走する一方、代表選では「増税派」と批判もあった。
5氏の立候補は過去最多。27日の告示から3日間の短期決戦で、野田氏は自身のグループに加え、岡田克也幹事長ら党執行部、菅グループを中心に票を固めていた。
前原氏は自身のグループの支持が中心。中間派を標榜する鹿野氏は農水関係や中堅・ベテラン議員、馬淵氏は若手らの支持を集めた。
29日の両院議員総会の演説で野田氏は「議員定数や公務員人件費の削減に全力で取り組み、それでも財源が足りない場合は国民に負担をお願いするかもしれない」と、財政再建への意欲を示した。海江田氏は「政権交代の原点に立ち返り、残された2年の衆院任期で国民との約束を誠実に果たす姿勢を示したい」と指摘した。
前原氏は自身の外国人献金問題に触れ「責任はすべて私にある」と陳謝。「挙党態勢と党内融和は実行で示す。偏見を廃し適材適所の人事を整えていきたい」と語った。
馬淵氏は「今こそしがらみを断ち切って政治を変える時だ。議員経験は短いが、全党一丸となって政権運営に取り組む」と述べ、党内の対立を乗り越える候補と訴えた。
鹿野氏は「代表選に対する国民の視線は誠に厳しい。これを肝に銘じないといけない。今こそ民主党は一つにならなければならない」と強調した。