特捜部の独自捜査を縮小 検察改革、最高検に監察指導部
大阪地検特捜部の不祥事を受け、最高検は8日、特捜部の独自捜査部門の縮小などを柱とする検察組織改革を発表した。東京と大阪、名古屋の3地検の特捜部は存続させるが、国税局の告発に基づく脱税など、経済事件の捜査体制を強化する。特捜部の名称変更は見送った。最高検に監察指導部を新設し、不適切な捜査がないかチェックすることも盛り込んだ。
笠間治雄検事総長は同日の記者会見で「独自捜査をしなければ特捜部ではないという考え方は弊害がある。犯罪の構成要件や処罰価値を冷静に判断する原点に戻りたい」と述べた。
検察改革は、検察の在り方検討会議(法相の私的諮問機関)の提言を受け、江田五月法相が今年4月、最高検に指示。在り方会議では、逮捕から起訴まで一貫して行う特捜部の独自捜査に対するチェック機能の欠如が問題点として指摘された。
このため特捜部は、国税局や証券取引等監視委員会、公正取引委員会などの告発に基づく財政経済事件に軸足を移すこととし、3地検は組織を見直す。経済事件に軸足を移すことで、相対的に独自捜査部門の体制は縮小される見通し。
東京地検特捜部は10月1日をめどに、政界汚職など独自捜査を担当する2つの「特殊直告班」を1つに統合。「財政経済班」は、国税局の告発を受ける「財政班(仮称)」と、監視委の告発や警察の送致を受ける「経済班(同)」に分け、人員を重点的に振り向ける。
大阪・名古屋の特捜部も人員の配置を見直し経済事件担当を増やす。10地検に置かれた特別刑事部の独自捜査事件の容疑者や、知的障害がある容疑者の取り調べの全過程も含めた録音・録画(可視化)も正式に決めた。
最高検には監察指導部を設置。容疑者の取り調べで供述を強要していないか、証拠隠しや改ざんをしていないかなどを点検、指導する。検察内部や外部から広く情報を集めて活用する。検察運営全般について意見や助言を受ける「参与会」も置き、原田国男・元東京高裁判事ら弁護士や学者計8人を参与に委嘱した。
このほか最高検は、航空機事故など過失事件や金融証券事件など6つの分野の専門委員会を設置。外部の有識者から専門知識を学び、捜査能力の向上などにつなげる。
法務・検察当局は、検察官の使命・役割を記した「基本規程」を10月までに定めるなど今後も改革に取り組む。