フィルムに残った美しい宮城
震災取材ブログ
震災前の宮城でロケをした映画「エクレール・お菓子放浪記」のプロデューサー、鳥居明夫さんは仙台に本社を置く映画制作・配給会社「シネマとうほく」の社長。東北発の映画による地域振興に力を尽くしている。
映画は昨年10月、宮城県石巻市の北上川河口でクランクインした。その時に取材して以来のお付き合いだ。撮影は行政や地元の人々の全面協力を得て、県内5市町で実施。全国公開を控えていた矢先、震災が起きた。撮影場所となった古い映画館「石巻岡田劇場」は津波で流され、地元エキストラの中に犠牲になった人もいる。
震災から数週間後、鳥居さんと電話で話した。「クランクインの日、石巻は晴れていました。みんな笑っていましたね。思い出すと悲しくなります」。私の話に鳥居さんは答えた。「でもね、震災前の美しい宮城はちゃんとこの映画に残っている。映画を通して、全国の人々に伝えていける。今になって、私たちそんな使命を自覚しているんですよ」
映画の原作は西村滋さんの同名の小説。いしだあゆみさんらが出演し、戦中から戦後の混乱期を精いっぱい生きる孤児の姿を描く。7月末、仙台から宮城県内での上映を再開し、全国でも順次上映していくという。(増田有莉)