ドイツ下院「脱原発」法案可決 自然エネルギー発電2倍に
【ベルリン=菅野幹雄】ドイツの連邦議会(下院)は30日、2022年までに国内の原子力発電所17基をすべて止める「脱原発」法案を与野党の圧倒的な賛成多数で可決した。3月の福島第1原子力発電所の事故後、主要国で初めて原発依存の脱却へカジを切る。原発停止分の電力を風力、太陽光など自然エネルギーの増強で混乱なく埋められるかどうかが課題だ。
採決では現連立与党のメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟、自由民主党に加え、01年に連立与党として脱原発を決めた野党の社会民主党と連合90・緑の党も賛成に回った。一段と早い原発脱却を求める左派党の反対を除き、主な与野党が脱原発で「大連立」を形成した格好だ。関連法案は連邦参議院(上院)で7月上旬も審議するが、大半の法律は下院で成立が確定した。
脱原発の関連法案は、原発の稼働期間を定めた原子力法や自然エネルギーの普及促進を目指す再生可能エネルギー法の改正を盛りこんだ。福島原発事故の直後に稼働を一時停止した旧式などの原発8基をそのまま廃止するほか、15、17、19年までに1基ずつ、21、22年までに3基ずつ原発を止める。
電力供給に占める風力、太陽光、バイオマス、地熱など自然エネルギー発電の比率を20年までに35%と現在の17%から2倍に上げる。自然エネルギーの電力を供給する送電網の整備、省エネルギーのための家屋や建物の改装促進、風力発電所の建設や大型化を容易にする措置も盛りこむ。
与党は昨年秋に原子力法の改正で原発の稼働期間を35年までに延長。ところが日本の原発事故でドイツ国内に原子力の安全性に対する不安が再燃し、メルケル首相が政策転換に踏み切った。
ドイツの電力会社や産業界の間では脱原発政策が電力料金やエネルギー価格の上昇、電力供給の不安をもたらし、国の競争力が低下しかねないと懸念する声も強い。電力会社は脱原発への方針転換後も核燃料への課税が続くことを不服として、政府を提訴する構えをみせている。