ドイツ 「脱原発」22年までに 与党合意、主要国で初
【ベルリン=菅野幹雄】ドイツ連立与党の首脳は29日、首相府で協議し、国内に17基ある原子力発電所を順次停止し、遅くとも2022年までに「脱原発」を実現する計画で合意した。独DPA通信など複数の現地メディアが伝えた。福島第1原子力発電所の事故で想定外のリスクが判明した原発への依存をやめ、風力や太陽光など自然エネルギーを大幅に伸ばす。
「脱原発」の方針決定はスイスが既に打ち出しているが、主要国ではドイツが初めてとなる。原発に対する拒否反応が国内世論で高まっているためだ。隣国フランスや中国など新興国はむしろ原発推進の立場で、世界のエネルギー政策の路線に大きな差が生じる。
現地メディアによると、13時間に及んだ独与党協議でまとまった合意は、17基のうち大半を10年後の21年までに停止させるという内容。ただし、自然エネルギーなどへの転換が計画通り進まない場合はうち3基を「激変緩和措置」として22年まで稼働させる。脱原発による発電コストの上昇や供給不足を懸念する自由民主党(FDP)の主張に配慮した。
東日本大震災の直後に3カ月間の稼働停止を決めた旧式の原発など8基については、7基を廃炉にし、残りの1基は冬場の電力不足に備え2013年まで再稼働できる状態にしておく。
メルケル首相は昨年、前政権での原発の稼働停止方針を変え、いったんは稼働期間の延長を法改正で決めた。だが3月に福島第1原発事故が発生し「考えを変えた」と脱原発に逆戻りする方針を表明していた。
ドイツでは25年前のチェルノブイリ原発事故で放射能漏れなどに対する国民の懸念が極めて大きい。最近の地方選では反原発を掲げる連合90・緑の党が躍進を続け、首相は「脱原発」の方針を早く明示する必要があると判断したようだ。
自然エネルギー分野を将来の成長分野と位置づけ、経済や雇用にもプラスとなると複数の与党幹部が説明しているが、コスト低減や供給確保が円滑に進むかどうかは不透明な面もある。