生食牛肉、衛生基準が形骸化 罰則なく店が判断
富山、福井両県の焼き肉チェーン店で客の男児3人が死亡するなどした集団食中毒。原因とみられるユッケは、生食用としては国の衛生基準に満たない肉だったが、そもそも基準を満たす生食用牛肉は流通しておらず、罰則規定のない基準の形骸化が指摘されている。
国の基準は、生食牛レバーによる腸管出血性大腸菌O157食中毒の発生を受けて1998年に全国に通達。専用設備での肉の解体・加工や温度10度以下での保存などを定めた。
だが厚生労働省によると、少なくとも2007年度以降、国内で生食用として出荷されたのは馬肉や馬レバーのみで、牛肉は出荷されていない。
東京都中央卸売市場食肉市場の担当者は「消費者の口に入るまで複数の業者を介するため生食用牛肉の品質は管理しきれない」と生食用としての出荷の難しさを指摘。
一方、全国の焼き肉店などでユッケなど生肉は人気。店側の判断で国の基準に満たない肉を提供しているのが実態だが、「罰則規定がないため指導にとどまり、販売をやめさせることはできない」(厚労省)という。
ユッケを提供する富山市の焼き肉店は「ユッケは需要がある。細心の注意を払い、店の責任で調理するしかない。業界では慣例だ」と話した。〔共同〕