津波てんでんこ
震災取材ブログ
「津波てんでんこ」という言葉がある。津波が来たらばらばらに逃げなさい、という三陸地方の言い伝えだ。が、今回の震災では多くの人が周りの命を救おうとして犠牲になってしまった。
宮城県女川町の民生委員の女性(67)は、ほかの人が高台に逃げる中、近所の足の不自由なお年寄りらに「逃げましょう」と声を掛けて回った。やがて津波は一帯を飲み込み、女性は行方不明に。女性の義妹(62)は「自分の危険なんて考えず、あの人らしい」と涙ぐむ。
南三陸町の女性(56)は、職場から自宅の義母(80)を助けに戻ったところ津波の第1波に流された。女性は流れ着いた近くの駅でなお義母を捜し続けていた姿が目撃されているが、第2波以降に流されたとみられ、後日遺体で見つかった。
その行動が正しかったのか、間違っていたのか、分からない。ただ話を聞くたびにたまらなく悲しくなる。(白石透冴)