一触即発の党内対立 民主執行部、造反抑え込み全力
自民、公明両党が提出を検討する内閣不信任決議案への対応を巡る民主党内の対立が激化し、一触即発の局面を迎えた。小沢一郎元代表は30日、鳩山由紀夫前首相らと協議し、菅直人首相の自発的辞任を促す一方、不信任案への同調を示唆。執行部は不信任案に欠席や賛成した場合は除籍(除名)を含め厳しく対処する方針を確認し、抑え込みに全力を挙げている。
30日夕、小沢元代表は国会近くの鳩山氏の個人事務所を訪ね、30分あまり会談した。鳩山氏は元代表に「政権交代の原点を取り戻すために、どのような道があるかを考えていきたい」と伝え、共同歩調を取る姿勢をにじませた。
■「新党視野か」
元代表はこの後、国会内で自らを支持する衆院当選2~4回生の「一新会」の幹部会に出席。福島第1原子力発電所の事故に関して「思った以上に悪くなっているが、この政治状況ではどうにもならない」と首相の対応を改めて批判。元代表は出席者に「今のままでは君たちは当時の国政に名を連ねた者として批判されるぞ」と結束を呼びかけたという。政務三役の一人は「辞表を出して賛成する」と語る。
党内最大勢力の小沢グループは衆院で約100人。ただ、自民、公明両党内には元代表との連携に否定的な声が多いことから、不信任案を可決して新たな政権枠組みができても「小沢外し」が起きる可能性がある。
同グループには「主導権を握るには民主党衆院議員305人のうち、150人以上の造反が必要だ」との見方がある。このため、衆院で約40人の鳩山グループや、特定のグループに属さない議員約50人などの動向が焦点となる。
元代表は30日、首相と距離を置く田中真紀子氏や、1993年に野党が提出した宮沢喜一内閣不信任案に賛成し、ともに自民党を離党した羽田孜元首相とも会談した。党内では「新党結成を視野に入れているのでは」との臆測が飛び交った。小沢グループの一人は「元代表から選挙対策を進めるよう指示を受けた。新党の準備だろう」と、新党論に言及する。
執行部も対抗策を打ち出している。岡田克也幹事長は30日の党役員会で、不信任案が提出された場合は粛々と否決し、賛成や欠席者は厳正に対処する方針を表明。出席者から異論は出なかった。
■「造反全部切る」
岡田氏は先週末から小沢系議員と個別に面会した。31日からは衆院当選3回生との期別懇談会を再開させたりするなど、不信任案に同調しないよう働き掛けを強める。
安住淳国会対策委員長も23日から衆院当選1回生議員との会合を連日のように開いている。30日には記者団に「不信任は政権交代した民主党を否定する」と指摘。造反しそうな議員の割り出しも始めた。斎藤勁国対委員長代理は小沢元代表の説得は「首相の担当だ」と語った。
首相支持派は「不信任案が可決したら首相は批判覚悟で衆院を解散するだろう」と選挙地盤の弱い小沢系の若手議員をけん制。30日夜に都内で対応を協議した党幹部の一人は「造反者は全て切る。マニフェスト(政権公約)見直しが進めやすくなる」と強調した。
首相は小沢元代表や鳩山氏ら代表経験者に会談を呼びかける意向を表明。30日には鳩山氏に電話で要請したが、日程は決まらなかった。