ソフトウエア会社社長ら強制捜査へ 1億円超の脱税容疑
東京地検
社員寮の建設工事費を水増し計上するなどの手口で3年間の所得約5億円を隠し、法人税約1億数千万円を脱税したとして、東京地検特捜部は22日、ソフトウエア開発「ソフトウエア興業」(東京・千代田)の社長(64)らに対し、近く法人税法違反(脱税)の疑いで強制捜査に乗り出す方針を固めたもようだ。
同社を巡っては与野党の複数の国会議員側に政治献金していたことも判明。特捜部は隠した所得の使途についても慎重に調べを進めるとみられる。
同法違反の疑いが持たれているのは、社長と、社長が役員を務め、実質的に経営する関連会社「ソフトウエア興業設備」(同)。
捜査関係者の話によると、社長はソフトウエア興業の社員寮の建設工事について、ソフトウエア興業設備が千葉県松戸市の建設業者に発注した際、工事費を水増しして支出。大部分を社長側に還流させる手口で法人所得を隠し、2009年3月期までの3年間に法人税1億数千万円を免れた疑いが持たれている。
隠した所得の一部は、不動産や知人女性の貴金属類の購入などに充てていたとみられる。特捜部は既に社長らから任意で事情を聴いているもようだ。
民間信用調査会社によると、ソフトウエア興業は1974年に設立。IT関連企業向けのソフトウエア開発が主な事業で、10年3月期の売上高は約191億円。社長は高額納税者公示制度が廃止されるまで長者番付に度々登場し、04年分の納税額は約2億5千万円だった。
一方、政治資金収支報告書などによると、同社は野田佳彦財務相が代表の政党支部に03、05年で計50万円、細田博之元官房長官が代表の政党支部に05、09年で計80万円を寄付するなど、与野党問わず複数の政治家側に幅広く献金していた。
野田氏の事務所は、日本経済新聞の取材に対し「収支報告書の保管期限を過ぎており献金の有無が確認できない」とコメント。細田氏の事務所は「献金などは法令にのっとって適正に受領し、収支報告書に記載した。返金については検討中」としている。