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情報システムが首都圏から「逃げる」?

地方や海外にデータ移管 震災でリスク意識に変化

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企業の「神経系」ともいえる情報システムを首都圏から地方や海外に分散させる動きが加速している。日本ではデータセンター(DC)の約7割が首都圏に集中しているが、東日本大震災や原発事故をきっかけとする電力不足を背景に「首都圏だけにシステムやデータを置いていては危険」との意識が広がっている。自前のシステムを持つ会社が西日本のDCと契約したり、海外のクラウドサービスを利用する例も相次いでいる。地方や海外のIT(情報技術)各社はユーザー獲得の好機とみて、受注活動に力を入れ始めた。震災は企業に「安全な情報管理」という大きな課題を突きつけている。

「電力不足で会社が機能不全に陥る前に手を打たないと」――。トヨタ自動車やGMなど向けのアンテナを生産するヨコオの深川浩一経営企画本部長は現在、アジア地域にデータのバックアップ拠点を持つ計画を進めている。現段階の候補地はマレーシアかシンガポールで、現地のDCのサーバーを借り受ける。群馬県富岡市にある生産管理システムの一部を海外に移管し、電力不足で国内のサーバーが停止しても生産活動に支障が出ない体制を築く。

計画停電をきっかけに

きっかけは3月に東京電力が実施した計画停電だった。同社は計画停電の「第5グループ」にあり、多い日で2回も停電した。一時的な緊急避難の策として、「事前にデータを手作業で紙に出力して、生産指示や出荷管理が滞らないようにした」(同社情報システム部の山下至部長)という。

ヨコオは生産拠点の8割以上が中国やマレーシアなど海外にある。システムが停止すると国内拠点だけでなく海外工場にも影響が出るため、計画停電後に「すぐに海外のDCを使おうと考えた」(深川氏)という。この夏、電力15%カットが行われても「自家発電装置でぎりぎりまかなえる」というが、予期せぬシステム停止やデータ消失に見舞われないよう万全を期す。

「今の日本にいる限り、電力供給不安や地震リスクは避けられない。長期的には国内にデータ拠点を置いていては抜本的なリスク回避策にはならない」(深川氏)。早ければ今年度中にもDCのホスティング(サーバー貸し出し)サービスを利用する形で、データを二重に保管できるようにする計画だ。

クラウドコンピューティング
ネットワーク上においたデータを通信回線を用いて使う。利用者はどこにいても、ネットワーク上に置いたデータにアクセスすることができる
データセンター(DC)
サーバーやデータの管理を行う施設
コロケーション(場所貸し)
DC事業者が提供するスペースにユーザーが自前のサーバーを持ち込むサービス。相場は1ラック(PCを置く棚)20万円程度。データ容量が大きい場合に向いている
ホスティング(サーバー貸し)
DC事業者が各種サーバーや回線などの設備ごとユーザーに貸しだすサービス。ユーザーは自前でサーバーを用意する必要がない。データ容量が比較的少ない場合の利用が多い

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)によると、首都圏に情報システムを持つ同社の顧客企業のうち50%以上が、地方への拠点分散を検討しているという。「震災」「原発・電力」「ライフライン寸断」など様々な事態が発生した時、データ保管や情報処理の機能が1カ所に集中していると事業を継続できなくなる恐れがあるからだ。CTCには「データのバックアップをとりたい」「クラウドコンピューティングを利用したい」など、企業からの問い合わせが以前の5倍以上に増えた。

生産・開発の世界展開が進んでいる製造業では、海外へのサーバー移設を検討する企業も多い。また外資系の大手金融機関では「(東京で業務が継続できない可能性を想定し)ほぼ全社が地方か海外へのDC移設を検討している」(野村総合研究所の平中直也上席コンサルタント)という。

関西には日本銀行のバックアップセンター(大阪府)がある。万が一、首都圏や東海地方が大規模な災害に見舞われても、近隣に日銀の出先があれば、決済業務の継続がスムーズに行えるという金融機関特有の利点を見据えたものだ。

カルビーは今回の震災が起きる前からサーバー機能の分散を進めてきた。2004年の新潟県中越地震で同業他社の工場が被災して、生産や物流の「司令塔」となる情報システムがダウンし、生産が停止した。同様の事態を避けるため「2006年にバックアップセンターを地震のリスクが低い沖縄に移した」(広報担当)。製造業が情報拠点を分散させる先駆けとなった。

需要見込み供給も拡大

DCやクラウドなどIT(情報技術)サービスを提供する企業も「脱・首都圏」の動きを強めている。

インターネットイニシアチブ(IIJ)は4月下旬、松江市にコンテナ型のデータセンターを開設した。IIJは首都圏を中心にDCを持っているが、このコンテナ型DCを使い地方展開を強化する。必要に応じてコンテナを増やすことができ消費電力も少ないため、低コストでサーバー能力を増設できるという。

ソフトバンク子会社のソフトバンクテレコムは韓国の通信会社KTと組んで釜山市にDCを設置する。日本からの地理的な近さや、現地の電力料金の安さを売り物に、「複数のデータ拠点を持ちたいという日本企業のニーズにこたえたい」(ソフトバンクの孫正義社長)という。DCは10月にも完成。ソフトバンクは大阪や福岡にも拠点を持つが、日本国内でデータを保管している企業のバックアップ用に活用してもらうという。

日本IBMや富士通などは世界各国にあるDCやサーバー機能を貸し出す事業を強化している。顧客の海外展開に合わせてどの国・地域のサーバーを使うかを選択できるようにしている。

米マイクロソフト、米グーグル、米アマゾン・ドット・コムもDC拠点と処理能力の拡充を進めており、クラウド受注を目指している。アマゾンは今春、東京周辺にDCを設置、日本での営業を本格化させた。同社が持つ海外の複数のDCを含め、災害時でも途切れなくサービスを提供できる体制を築く。

サーバー機能を地方・海外に移転する際の「支援サービス」も盛んだ。日商エレクトロニクス(東京・中央)系のインフォリスクマネージ(東京・江東)は大阪と沖縄でデータセンターを借りて機能を小分けし、顧客に提供するサービスを7月から始める。夏の電力不足が見込まれる東京電力中部電力管内の企業の利用を想定している。KDDIはシンガポールのDCで「災害復旧サービス」を始めた。同社ではDCの利用に関する問い合わせが震災後10倍に増え、海外拠点の利用を検討する企業も増えているという。日本国内の震災や電力不足に影響されない海外DCサービスも売り物にしていく。

苦戦してきた地方にも追い風

これまでユーザーの獲得で苦戦してきた地方のDC会社も勢いづいている。従来は「(本社がある首都圏から)距離が遠い」「サービス体制が不安」などの理由から、思うように企業顧客を開拓できずにいた。震災と原発事故を機に状況は一変。DC運営のインデックス沖縄(沖縄県浦添市)には4月半ばから1カ月で30件の問い合わせがあった。北海道のDC利用を望む声も多く、北海道経済部産業立地課には「道に進出したいという話が多く舞い込んでいる」。北海道では冷涼な外気や雪氷でサーバーを冷却するため、首都圏に比べ89%の電力コスト削減が可能で低コストでのDC運用が可能なためだ。

DCは延べ床面積で7割が関東地区に集中しており、企業が自前でサーバーを持つ割合も全体の4割を占める。「近距離」「自前」にこだわる理由はいくつかあるが、その1つには、「(首都圏の)50キロ~60キロメートル程度の距離なら万が一のトラブル時にも現地に直行して対応できる」といった安心感がある。

通信のコストと速度の問題も大きい。「マレーシアのDCを使うと、日本との通信費が従来の3倍以上かかる」(ヨコオの山下氏)。データ検索や演算処理に影響を及ぼす「通信の遅延」もある。例えば、「首都圏内」と「首都圏―北海道」の伝送時間を比べた場合、100分の数秒程度の差が出る可能性がある。大容量データを扱う企業にとってはDCを選択する際の大事な要素となる。

クラウドやDCで遠隔地のサーバーを使う際には、情報セキュリティーの確保も必須の条件だ。先月、ソニー子会社が世界で1億人分の個人データが流出したと発表。1日には米グーグルが電子メールサービスの利用者に対してサイバー攻撃があり数百人の個人情報が盗まれたことを公表している。社内外を問わず情報システムを巡るリスク管理の必要性が高まっているだけに、外部のサービスを利用するのであれば、高度なセキュリティー技術を持つ専門事業者を選ぶことが重要になる。

IT市場、復興需要で回復へ

データ保管の一極集中リスクが認識され始めたとはいえ、いまだに遠隔地へ情報を置くことに不安を抱く企業は多い。ヨコオでも「機密性の高いCAD(コンピューターによる設計)のデータだけは(本社から目が届く)国内に置く」と決めており、「分散」か「集中」かを巡って企業も揺れているのが実態だ。

2011年の国内IT市場は10年に比べ大幅に減少する見通し(IDCジャパン予測)。しかし12年は企業や自治体などで震災復興需要が発生し、クラウド導入やDC利用、事業継続計画(BCP)の策定が盛んになることでハード、サービスとも需要は回復に向かうという。

開発や生産、営業など経営の根幹に関わるデータの管理・運用は、企業の生命線。「(それらをどう守るかの)対応策を取引先に示せないと、海外企業からはリスクとみなされることもある」(ヨコオの深川氏)。IDCジャパンによると「この夏さえ乗り切れば大丈夫、という企業もでてくる」というように、情報システムのリスク管理を一時的な問題ととらえる風潮もあるという。しかし災害は思わぬ形で襲ってくる。目に見えない「データ」の重みを認識し、事業継続に向けて最大限の安全策を講じることが、企業の競争力にもつながっていく。

(斉藤美保)

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