欧州銀の資産査定、公表7月に延期 一部に再提出要求
【ロンドン=上杉素直】欧州の主要銀行の健全性を調べる資産査定(ストレステスト)の結果公表が当初予定した6月中旬から7月以降へずれ込む見通しになった。財務予測が楽観的な一部銀行について査定当局がデータの再提出を求め、今月中の作業終了が難しくなったため。金融市場でギリシャ国債への不安が収まらない段階での査定結果の公表を避けた、との見方も出ている。
対象91行の財務予測を精査中の欧州銀行監督機構(EBA)は、一部について予測やり直しが避けられないと判断、銀行側や所属国当局と調整に入った。自己資本の定義や有価証券の分類をめぐって各国間にルールの隔たりがあり、調整が難航しているという。
日米も加わるバーゼル銀行監督委員会の銀行資本に関する議論を踏まえ、EBAは欧州ストレステストで「狭義の中核的自己資本5%」を健全性を確保する合格ラインと位置付けた。「狭義資本」は経営危機時に換金しやすい普通株や内部留保しか認められず、従来より銀行にとって厳しい査定基準になる。
ストレステストは経済が落ち込んだ場合の銀行資産の悪化を試算し、当局が必要に応じて銀行に資本増強を促す。欧州では昨年7月にも実施した。
ユーロ圏周辺国の国債価格は下落を続けており、金融システムへの影響が懸念されている。昨年はストレステストで健全とされたアイルランドの銀行の資本不足が数カ月後にわかり、批判を浴びた。ドイツやスペインの地域金融機関など中堅行の健全性に市場の注目が集まっている。