「日本 7~12月には回復」 アジア開銀総会で黒田総裁
【ハノイ=遠西俊洋】アジア開発銀行(ADB)の年次総会が3日、ベトナムのハノイで始まった。黒田東彦総裁は記者会見で、東日本大震災の影響について「日本経済は6月ごろまで落ち込むが、下半期(7~12月)には復興需要などで回復し、アジア経済にもプラスの効果をもたらす」と語った。福島第1原子力発電所で起きた深刻な事故の余波は続いているとしながらも、アジア経済全体への悪影響は限定的との見方を強調した。
原発事故を踏まえ、クリーンエネルギーへの需要が高まっていることに関しては「特に太陽光・熱や風力といった再生可能エネルギーの拡大に協力していきたい」との考えをあらためて示した。ADBは太陽光・熱などへの支援を優先するとして、以前から原子力発電には融資していない。
ADBはアジア新興国の実質成長率を今年は7.8%、来年は7.7%と堅調に推移するとみるが「不安定な中東情勢に伴う石油高や食料高などが、懸念をもたらしている」と物価上昇に警戒感を示した。アジアの一部の国が導入している資本流入規制については「短期的に実施している国もみられるが、長期的には市場形成に悪影響を与える」との従来の見方を繰り返した。