ジャガイモの害虫をふ化させ退治 北大、駆除に新手法
北海道大の谷野圭持教授、宮下正昭名誉教授らは、ジャガイモの害虫のふ化を促す物質を合成する技術を開発した。害虫は北海道を中心に、約1万ヘクタールで被害をもたらしている。ジャガイモが植わっていない畑に、この物質をまいて害虫をふ化させ、餓死に追い込む駆除法が期待できる。谷野教授は「実用化には時間がかかるが、農家のために挑戦したい」と話している。
成果は英科学誌ネイチャー・ケミストリー(電子版)に発表した。害虫の名前は「ジャガイモシストセンチュウ」。体長1ミリ以下で、ジャガイモなどナス科の根に寄生し収穫量を激減させる。イモが植え付けられるまで、多数の卵がシストという殻に入った状態で土の中で休眠し、農薬もほとんど効かない。
研究チームはジャガイモから作られ、この害虫のふ化を促す「ソラノエクレピンA」という物質を合成した。市販の化合物から52回の反応を繰り返してできた。
この物質が微量入った液の中で、害虫の卵を培養するとふ化した。幼虫はジャガイモ以外からは栄養が取れない。合成物質をジャガイモを植えていない畑に散布し、害虫をふ化させれば、餓死する。研究チームは他の昆虫などに影響を与えず効果の高い駆除法が実現できるとみている。現在は製造コストが割高なため、今後は構造を一部簡便にした化合物を作り効果を確かめる。