放射性物質、海を越え米欧に達した状況再現 九大・東大
スパコンで解析
九州大学と東京大学は東京電力福島第1原子力発電所の事故で放出された放射性物質が、太平洋を越えて海外に達した様子を計算モデルを使って再現し22日発表した。放射性物質は東日本を通過した低気圧に伴う上昇気流で高層に巻き上げられ、偏西風に乗って東へ運ばれた。地表付近では原発近くで南東の風が吹き、北西方向に放射性物質が広がった。
研究グループは今回の手法を使えば、原発事故の際の放射性物質の動きを広範囲にわたり予測するのに役立つとみている。
福島第1原発からは3月14~16日に起きた水素爆発などにより放射線物質が大気中に放出され、空気中の微小なちりなどに付いて広がったとみられる。研究グループは気象庁や米海洋大気局(NOAA)の気象データをもとに、大気汚染予測の手法を応用し、九大のスーパーコンピューターで放射性物質の拡散の仕方や濃度を解析した。
その結果、比較的早い段階で放出され1~1.5キロメートルの低い高度を漂っていた放射性物質の微粒子は14~15日に一気に高層に達した。関東の南を通過した低気圧の北側に生じた上昇気流が原因。高さ5キロメートルの上空まで巻き上げられたとみられるという。
高層には偏西風と呼ばれる強い西風が吹いており、この風で運ばれた放射性物質は18日に北米西岸に、20~22日にはアイスランドやスイスに達した。計算によると米国西海岸に達するまでに放射線物質の濃度は原発付近の1億分の1程度まで低下する。これは実際の測定結果と一致した。
地表近くの下層の風は福島第1原発付近では低気圧の影響で南東風となり、北西側に放射性物質を運んだ。原発の北西方向に放射線量が高い地域が分布している結果と合う。
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