糖尿病薬の特許権、米ファンドに売却 アステラス
アステラス製薬は30日、糖尿病治療薬に関する特許権などの知的財産を米国の投資ファンドに6億900万ドル(約490億円)で売却すると発表した。保有し続ければ他社から将来ロイヤルティー収入を得られる可能性があるが、早期に現金化し、今後力を入れる抗がん剤などの研究開発費に回す方が効率的と判断した。
医薬品や新薬候補に関する知的財産に投資する米ファンドのロイヤルティー・ファーマ・ファイナンス・トラスト(デラウェア州)へ7月中に売却する予定。資産の現金化に当たるため、2012年3月期業績に及ぼす影響は軽微という。
今回売却する知的財産は、昨年に米国の製薬会社OSIファーマシューティカルズを買収したのに伴い手に入れた。ただ、アステラスは泌尿器や臓器移植などに関連する医療用医薬品に強く、糖尿病薬は主力の事業領域からは外れている。
一方で将来の収益源と位置付ける抗がん剤では、複数の新薬候補が多額の費用が必要な開発後期の段階に来ており、今回の売却で得た資金を製品化の加速に役立てる見通しだ。
医薬品に関する知的財産の売却は、M&A(合併・買収)に伴って大胆な資産整理をする欧米の製薬大手では一般的。ただし日本企業は将来生み出す可能性がある収益に期待して保有し続ける場合が多く、アステラスのように早期の現金化に動く事例はまだ少ない。
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