東電の債権放棄、銀行に戸惑い 首脳「コメントできぬ」
政府が東京電力福島第1原子力発電所事故の損害賠償(補償)を支援する枠組みに関連し、枝野幸男官房長官が金融機関が債権放棄をしないと東電への公的資金注入に「国民の理解は到底得られない」と発言したことが、銀行界に波紋を広げている。この日は多くの大手銀行グループが2011年3月期の決算を発表。記者会見に臨んだ大手行のトップらは、「発言の背景が分からずコメントできない」(みずほフィナンシャルグループの塚本隆史社長)と語るなど、戸惑いを隠さなかった。
金融機関の東電向け融資は約4兆円あり、原発事故前に実行された分が約2兆円あるという。これらの融資で債権放棄を迫られると巨額の損失処理が必要となる。みずほFGの塚本社長は「国による支援や電力会社の負担を含めた最終的な仕組みがどんな形になるのかが最初のポイント。現時点で債権放棄うんぬんというのは念頭にない」と述べた。
東電への支援の枠組みについて、三井住友フィナンシャルグループの宮田孝一社長は「日本の金融市場に対する高い信頼感を担保することが大前提だ」と指摘した。ただ、債権放棄を促す官房長官の発言に対しては、「現時点でのコメントは差し控えたい」と述べるにとどめた。
債権放棄を迫られると、残る融資を不良債権として扱う必要が出てくる可能性もある。三井住友トラスト・ホールディングスの田辺和夫社長は、東電の債務者区分について「今の段階では判断しかねる。政府の支援や賠償の仕方などを見ないとなんとも言えない」と語った。東電などの関係者からは債権放棄にからむ「特別な申し込みがあるわけではない。申し込みが来てから計画の中身全体を見て考える」と語った。〔日経QUICKニュース〕