「豊かな海に戻って」 気仙沼の漁師ら、上流の山で植樹祭
東日本大震災の津波で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市の港に注ぐ大川の上流、岩手県一関市の山麓で5日、毎年恒例の植樹祭が開かれた。震災で一時開催が危ぶまれたが、気仙沼の被災した漁師らも参加。「いつかまた豊かな海を」と祈りを込めて木を植えた。
今年で23年目になる「森は海の恋人植樹祭」を開いたのは、気仙沼のカキ養殖業、畠山重篤さん(67)が代表を務める「牡蠣の森を慕う会」と、大川上流にある一関市の室根地区の自治会住民ら。同地区の矢越山麓に両地域の住民や全国の有志ら約1200人が集まり、ブナやコナラなど40種以上、約千本の広葉樹を植えた。
畠山さんらは「豊かな海は注ぎ込む川から。川は上流の森から」と考え、長年、植樹に取り組んできた。しかし、震災で気仙沼港は壊滅に近い状態に。畠山さん自身も母(93)を亡くし、「今年は無理だと思った」。
しかし、「今年は"お客さん"でよいから、ぜひやろう」と室根地区の自治会側が提案。畠山さんも「いつまでも負けていられない。植樹祭をバネに生活を立て直さなければ」と心を決めた。
この日、参加した気仙沼市の漁師、鈴木孝幸さん(72)は「街の復興には海が必要。この一本がまた豊かな海を取り戻す力になれば」と話した。