羽なし・省エネ…扇風機、個性競う　5月出荷2.3倍

「節電の夏」を迎え、扇風機が飛ぶように売れている。5月の国内出荷実績は前年同月比2.3倍の31億4000万円。「インバーターつき」や「羽根なし」といった変わり種も人気を集め、メーカー各社は省エネ性とデザイン性を競っている。成熟製品の売り場がにわかに活況を呈している。

家電ベンチャーのバルミューダ（東京都小平市、寺尾玄社長）が開発した省エネ扇風機は電力消費量を通常の10分の1まで抑えた。エアコンなどで使う「インバーター」式のモーターを使う。出荷台数は前年同月比3倍だ。「省エネ志向が高まると予測し、昨年より1カ月早い4月に店頭に商品を供給できる体制を整えた」（同社）。

特徴的なデザインで販売を伸ばしているのが英ダイソン。羽根がない「エアマルチプライアー」は5月の第3週時点の出荷台数が前年同期の4倍に達した。

台座からモーターで空気を吸い込み、枠の部分から風が吹き出す仕組み。3万7000～5万4000円と値は張るが、手をはさむ心配がない安全性と「特徴的なデザインが受けている」（同社）。

汎用品化が進んだ扇風機を国内総合電機メーカーで手掛けているのは東芝や三洋などに限られ、国内シェアの約8割は中小電機メーカーや機械商社などが占めている。

機械商社の吉井電気（群馬県高崎市）が手掛ける中型サイズの扇風機の店頭販売価格は2480円前後。手軽さが受け5月は前年同月比2倍強の売れ行きという。

折からの特需を受け大手電機メーカーも「扇風機強化」に動く。

シャープは6月に10年ぶりに扇風機を発売した。ばい菌の働きを抑える効果があるとされる「プラズマクラスターイオン」発生器を付け、需要取り込みを狙う。

東芝の扇風機出荷台数は同2.3倍だった。高性能モーターを搭載し消費電力を従来品に比べ約5割抑えた製品などが売れている。

昨年より消費者の動き出しが早く生産が追いついていない状態で「5月から家電量販店への出荷を待ってもらっている」（同社）という。6月に中国の生産委託先の工場で前年同月に比べ生産を4割拡大、需要増に対応する。

日本電機工業会（JEMA）が27日に発表した5月の白物家電の国内出荷実績は、前年同月比13.3%増の1832億3700万円だった。2カ月連続で2ケタ台の高い伸びを見せた。電力不足が懸念される夏に向け低消費電力のエアコンや洗濯機の買い替えが進んだ。