アップル「iCloud」発表 音楽・写真を無料保存
【シリコンバレー=岡田信行】米アップルが6日、楽曲や写真をインターネットを通じて携帯端末やパソコンなどの間で自動的に共有できる無料クラウドサービスを今秋に始めると発表した。パソコンを中心に製品をつないできた従来の戦略を転換。2億2500万人に上るコンテンツ(情報の内容)販売の顧客基盤を生かし、クラウドサービスで米アマゾン・ドット・コムや米グーグルに対抗する。
アップルの新サービスは「iCloud(アイクラウド)」。米サンフランシスコ市で6日開幕した開発者向けイベントで、病気休養中のスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)が自ら発表した。
多機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」や多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」、パソコン「マック」など同一ユーザーが保有するアップル製品の間で情報を自動的に共有できるのが特徴。楽曲を購入したり、文書を作成したりすると、他の端末にもデータを自動的に送信。ユーザーは端末ごとに情報をダウンロード(取り込み)する必要がない。
ジョブズ氏は「10年前はパソコンを軸に様々な機器をつなげる戦略を立てたが、今やクラウドが軸になった」と強調した。「iTunes(アイチューンズ)」を軸に世界最大級のコンテンツ配信の仕組みを育ててきた実績を武器に、ユーザーの使い勝手や統一感を前面に押しだす。有料のクラウド型音楽配信サービス「アイチューンズ・マッチ」も始める。
IT(情報技術)業界ではアマゾンやグーグルが相次いでクラウド型の音楽配信サービスを発表。高機能携帯電話や多機能携帯端末など機器を選ばないクラウド化の波のなかで、自社製の機器とサービスにこだわるアップルの次の一手が注目されていた。今後、アップルとアマゾン、グーグルとの間でユーザー争奪戦が激しくなりそうだ。