武田薬品、スイス社買収を正式発表 1兆1100億円
武田薬品工業は19日、スイスの製薬大手ナイコメッド(チューリヒ)を買収すると正式発表した。96億ユーロ(約1兆1100億円)で完全子会社化し、東欧などの市場へ本格進出する。武田の新興国での売上高は8倍に拡大し、将来は日米欧と新興国で売上高をほぼ4等分する体制を目指す。成長へ向け、先進国偏重から大きく舵(かじ)を切った。
「21世紀の企業に必要なのはグローバライゼーションとダイバーシティー(多様性)だ。それを満たすために決断した」――。同日に東京本社で記者会見した長谷川閑史社長は、新興国に弱いという自社の弱点を補える企業買収だと強調した。
ナイコメッドは1874年に創業した非上場の製薬会社。呼吸器などの医療用医薬品や一般用医薬品などを製造販売している。武田の既存事業と重複する米国の皮膚科事業を切り離したうえで、武田の完全子会社となる。同事業を除いた2010年12月期売上高は28億ユーロ(約3200億円)、社員数は約1万2000人。東欧や旧ソ連圏、中南米などの新興国で売上高の約4割を得ている。
武田はナイコメッドの親会社である複数の投資ファンドから、発行済み株式すべてを9月末までに取得する。武田は3月末時点で8700億円の手元資金を保有。買収費用のうち6000億~7000億円は金融機関から借り入れ、残りを手元資金で賄う計画だ。円高が進み数年前より買収費用は少なくて済む計算だが、財務体質の悪化は避けられない。
10年の武田の中国やロシア、ブラジルといった新興国での売上高は178億円。ナイコメッドを加えることで8倍の1426億円となる。医薬品を販売する国も28カ国から約70カ国へ一気に広がる。
10年度の医療用医薬品の売上高では日米欧が97%を占め、アジアなどの新興国は3%にすぎない。15年度には日本が3割強で北米、欧州、新興国がそれぞれ2割ずつという売上高構成に転換する計画だ。
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