花火大会、首都圏で中止相次ぐ 警備人員や電力不足
首都圏で花火大会を中止する動きが相次いでいる。警察や消防が東日本大震災の被災地に人員を派遣し大会開催に必要な警備が難しくなっているほか、電力不足の影響で大勢の観客を輸送するための電車の増便もしにくい。運営費に充てる協賛金集めも困難で開催を見送らざるを得ない例もある。大きな集客が見込める夏の一大イベントであるだけに、地域経済にとって痛手になりそうだ。
江戸川区花火大会実行委員会は8月6日に予定していた大会の中止を決めた。警備に要する人員確保が難しくなったことに加え「節電で電車の増便を要請できない」(区産業振興課)という事情もある。去年は観客を輸送するため都営地下鉄新宿線を13本増便しており、このままでは観客が駅にあふれる恐れもある。中止は1976年の開始以来初めて。毎年130万人超の人が訪れており「経済効果を考えると苦渋の決断」(同)という。
埼玉県戸田市などで構成する戸田橋花火大会実行委員会も、8月6日に予定していた花火大会の開催を見送る。2010年は46万人が来場した地域の最大のイベントで、地元からは「非常に残念」と開催中止を惜しむ声が上がっている。
都県名 | 大会名 | 昨年の来場者数 |
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中止 | ||
東京 | 江戸川区花火大会 | 約139万人 |
東京湾大華火祭 | 約70万人 | |
江東花火大会 | 約30万人 | |
神奈川 | 横浜スパークリングトワイライト | 約10万人 |
埼玉 | 戸田橋花火大会 | 約46万人 |
千葉 | 佐倉市民花火大会 | 約15万人 |
実施 | ||
東京 | 葛飾納涼花火大会 | 約37万人 |
未定 | ||
東京 | 隅田川花火大会 | 約95万人 |
神宮外苑花火大会 | 約100万人 | |
神奈川 | あつぎ鮎まつり大花火大会 | 約75万人 |
8月13日に開催予定だった横浜港の横浜スパークリングトワイライトは、運営経費を賄うための資金集めが難しいと判断した。開催費用8千万円のうち、3~4割は企業などからの協賛金で賄う計画だった。しかし「企業は花火の協賛金より被災地への義援金を重視すると考えて中止を決めた」(実行委員会)。
千葉県の佐倉市民花火大会は3月時点で開催中止を決めた。当時は夏場に向けて計画停電の実施が予定されており、安全確保の面から実施は不可能と判断した。同大会は打ち上げ場所に農地を使っている。開催するかどうかを早く決めなければ作付けに影響するため、早期に判断せざるを得なかった。市産業振興課は「市民の期待が大きい大会なので別のイベントを考えたい」としている。
開催を決めた大会も規模の縮小といった対応を迫られている。葛飾納涼花火大会実行委員会は打ち上げ数を1万発から7000発に減らし、大会の時間も短縮する。区内に避難している被災者を招待し、会場で募金活動もする予定。同区観光課は「震災後、飲食店などの経営は非常に厳しい状況。大会開催は長い目で見れば被災地の復興にもつながる」と強調する。
隅田川花火大会は例年は4月上旬に開催を決めているが「警備の人員が確保できるかどうか、ぎりぎりまで見極めたい」(墨田区)として5月中旬まで決定を延期している。