駅名にだまされるな 「青山1丁目」のミステリー
正解は港区南青山1丁目。都営地下鉄にも青山一丁目駅がありますが、こちらも所在地は港区北青山1丁目です。港区にはそもそも「南青山」「北青山」はありますが、南も北も付かない単なる「青山」という地名はありません。
駅名が所在地と食い違う有名な例では、JR山手線などの品川駅や目黒駅があります。品川駅の所在地は東京都品川区ではなく港区、目黒駅は目黒区ではなく品川区。どちらも駅名の由来は諸説ありますが、現行の東京23区体制になったのは駅ができてからずっとあとの1947年ですから、駅名とズレがあるのもわかります。東京メトロの本郷三丁目駅も、所在地は文京区本郷2丁目で駅名と食い違いますが、調べるとかつての地名に由来していそうです。駅のあるあたりは開業当時の54年には実際に本郷3丁目でした。
ですが青山一丁目駅の場合、今もかつても「青山1丁目」という地名が存在したことはありません。現在の「北青山」「南青山」という名前になったのは66年。38年に駅が開業したときは、あたりは「青山北町1丁目」「青山南町1丁目」と呼ばれていました。駅名の由来について開業当時の新聞記事を調べたり、取材したりしてみましたが、青山一丁目を走る銀座線は日本最古の地下鉄。どのような経緯でこの駅名になったかはわからずじまいでした。
駅名とするには「青山北町1丁目」などというのは少し長すぎますし、また駅はちょうど北町と南町を分ける道の下につくられました。あたりを走っていた都電に「青山一丁目」という停留所があったことからも、通りのいい「青山一丁目」になったと推測することはできるかもしれません。
駅名としてはわかりやすくても、日々、新聞紙面をチェックする校閲記者にとって、施設名と所在地の地名が食い違っているのは引っかけ問題のようでいやなものです。青山一丁目駅につられて「港区青山にある……」なんて記事が世に出ないよう、日夜ウンチクを蓄えるのも校閲記者の仕事といえます。
(若狭美緒)