北朝鮮、暴動鎮圧の特殊部隊を新設 中東政変の波及警戒か
金正日総書記の指示 韓国メディア
【ソウル=山口真典】韓国のインターネットサイト「デイリーNK」は23日、北朝鮮が金正日総書記の指示で「暴動を鎮圧するための特殊部隊」を新設したと伝えた。北朝鮮公式メディアは反体制デモによる中東地域の混乱を一切、報じていないが、中国との境界地域を中心に北朝鮮各地で住民デモや当局への抗議行動、衝突が散発しているとの情報もある。危機感を強めた金総書記が混乱波及の阻止に動きはじめたとみられる。
デイリーNKによると特殊機動隊は100人規模で、市場など人々が集まる場所で暴動につながる動きを摘発している。金総書記は「国際社会に広がる事態に高い警戒心を持ち、どんな状況にも直ちに対処する体制を備えねばならない」と強調。「悪い現象が起きたらどんな地域、対象であっても無慈悲に掃討すべきだ」と命じたという。
一方、韓国紙の朝鮮日報は24日付で北朝鮮内部消息筋の話として、中朝境界付近の新義州(シンウィジュ)市で18日ごろ、住民数百人がデモを展開し、当局と衝突したと報じた。住民と警察関係者との小競り合いがデモに発展。軍部隊も投入して鎮圧し、住民に死傷者が出たという。
同消息筋は「当局が配給実施の約束を守らず、住民にたまった不満が爆発した」と指摘した。北朝鮮の公式メディアはこれまでエジプトやリビア、イランなど友好関係にある中東諸国の反体制運動について全く情報を発信していないが、中東の反政府運動に関する情報も口コミなどで北朝鮮住民に広がっているもようだ。
7日には在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の機関紙「朝鮮新報」がエジプトのムバラク政権が親米政権だったことを挙げて「人民大衆が歴史の主体であり反米自由化は時代の流れだ」と強調、ムバラク政権崩壊を当然だとする論評を掲載した。一連の対応からは、内部の抗議行動やデモを厳しく弾圧するとともに、中東混乱の情報が北朝鮮の住民を反体制運動に走らせないよう腐心する様子がうかがえる。