米マイスペースの苦境、日本でも人ごとではなく
ネット業界の栄枯盛衰映す
交流サイト(SNS)大手の米マイスペースが、全従業員のほぼ半分を削減する大規模なリストラに踏み切る。創業からわずか3年で1億人の利用者を集め、「世界最大のSNS」として一時はもてはやされたが、5億人以上が利用する米フェイスブックに押され、業績が低迷していた。主役がめまぐるしく入れ替わるインターネット業界の栄枯盛衰を象徴する新たな事例といえる。
「今回のリストラで、我々は新サービスをより素早く開発し、財務面でもより機動的に動けるようになる」。マイスペースのマイク・ジョーンズ最高経営責任者(CEO)は11日、全従業員の47%に相当する約500人の人員削減の狙いについてこう説明した。
ただ、同社は2009年にも大規模な人員削減を実施している。相次ぐ「戦線縮小」に業界では「売却に向けた準備」との見方が広がっている。
親会社の米メディア大手、ニューズ・コーポレーションのルパート・マードック会長兼最高経営責任者(CEO)はさぞ悔しがっていることだろう。ニューズは05年、当時勢いのあったマイスペースを5億8000万ドル(約480億円)で買収。「メディア王のSNS進出」として話題を呼んだ。06年にはソフトバンクと組んで日本進出も発表、「黒船来襲」と騒がれた。
マイスペースとフェイスブックはどちらもサービス開始は04年で"同い年"。若者に人気の音楽アーティストなどにファンとの交流の場として利用してもらうことで、マイスペースは急速に利用者を伸ばした。
一方、米ハーバード大の学生向けSNSとしてスタートしたフェイスブックは有名人の人気に頼ることなく、「友人との交流の場」というSNS本来の機能に磨きをかけ、地道に利用者を広げていった。フェイスブックの利用者が1億人を突破したのは、マイスペースより1年以上後のことだ。
マイスペースの苦境は、人ごとではない。ミクシィやディー・エヌ・エー(DeNA)の「モバゲータウン」など国内大手SNSの利用者数は2000万人前後にとどまっており、規模の差は歴然としている。マイスペースとフェイスブックの明暗を分けたのは、電気や水道のように生活に不可欠な「インフラ」になれたかどうか。持続的成長の条件ははっきりとしている。
(ニューヨーク=小川義也)
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