九州で渇水深刻に　自治体、水融通や節水呼びかけ

九州で渇水が深刻化してきた。3月以降の九州の降雨量は平年に比べ6～7割少なく、九州地方整備局は6年ぶりに渇水対策本部を設置した。宮崎県では県営の2ダムが枯渇状態に陥り、水不足で減産を強いられる製紙工場も出た。少雨が続けば農業への影響も避けられず、自治体は相次ぎ対策に乗り出し始めた。

九州地方整備局は25日、筑後川水系の福岡、佐賀、熊本、大分の4県の担当者を集め、渇水対策の会議を開いた。給水制限を避けるため、同水系から各県が利用できる水量を9年ぶりに融通し合うことを決めた。

宮崎県では県が管理する日南ダム（日南市）と広渡ダム（同）がそれぞれ22日と25日、ダム管理に必要な最低水位を下回り、事実上の枯渇状態にある。必要最低水位に対する貯水率は4月4日時点で100%だったものがゼロになった。宮崎県は県民への節水の呼びかけや、農家への作物の作付け時期の調整などを働きかけている。

両ダムのある2河川から取水する王子製紙日南工場は4月、2割程度の減産を数回強いられた。先週末の雨で現在はフル生産しているが、「少雨が続けば再び減産は避けられない」（同工場）状態だ。九州電力の一ツ瀬発電所（西都市、出力18万キロワット）も、ダムの水位低下で3月20日から発電できない状況だ。

2つの農業用ダムで配水停止に追い込まれた大分県では広瀬勝貞知事が25日、農業向け渇水緊急対策事業を発表した。3月の総雨量が一定以下の地域などで掘削など農業用水確保の費用の3分の1を県が事業者に補助し、市町村にも6分の1の負担を求める。県農林水産部では「7、8月の水不足はこれまでもあるが、今の時期では異例」と警戒する。

九州農政局も同日、飯高悟局長を本部長とする渇水の災害対策本部を設けた。現時点で農作物に被害はないが、「今後も続けば5月以降、稲作などへの影響は避けられない」（農産課）ためだ。

福岡市は10年12月以降、海水淡水化センターの稼働を1日あたり5万トンと通常より25%増やしている。26日には節水推進本部を設置し、市民に節水を呼びかける。大分県では臼杵市の一部で給水量を5%カットしているほか、津久見市の保戸島では給水船のピストン輸送で対応している。