日銀、資産購入5兆円増額 総裁「必要なら適切な措置」
日銀は14日の金融政策決定会合で、東日本巨大地震による日本経済の下振れを食い止めるため、追加的な金融緩和策を決めた。昨年10月に創設した基金のうち、資産の買い取り枠を社債やコマーシャルペーパー(CP)を中心に現行の5兆円から10兆円に引き上げた。記者会見した白川方明総裁は「被害が広範囲に及んでおり、当面、生産活動の低下や企業・家計のマインド悪化が懸念される」と景気の先行きへの警戒感を表明した。
緩和策は9人の政策委員のうち8人が賛成して決まった。須田美矢子審議委員が反対した。翌日物金利の誘導目標を0~0.1%とする事実上のゼロ金利政策は全員一致で維持した。
増額分のうち社債とCPで計3兆円を占め、リスク資産が中心となる。総裁は「企業のマインド悪化や市場のリスク回避姿勢が経済に悪影響を与えるのを未然に防ぐ」と狙いを語った。残りは長短国債が1兆5000億円、上場投資信託(ETF)などが5000億円。2012年6月末までに買い取りを終える。金融機関への低利の資金供給を含めた基金総額は40兆円に増える。
日銀は今回、景気の回復シナリオ自体は変えなかったが、白川総裁は地震の影響について「経済データや企業への聞き取り、市場の状況把握をフル動員し、的確な情勢判断に努める」と発言。4月中にも景気への影響を見極める意向を示した。そのうえで「必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく」と述べ、景気の下振れリスクが高まったと判断すれば一段の追加緩和策も辞さない構えをみせた。
日銀は14日、金融市場に対して過去最大規模である計21兆8000億円の資金供給の実施を決めた。このうち同日中に実行した緊急の供給は計15兆円に達した。