都知事選、4月10日投票 見えぬ「次の4年間」
統一地方選
東京都知事選挙が24日告示される。現職の石原慎太郎氏のほか共産党前参院議員の小池晃氏、ワタミ前会長の渡辺美樹氏、前宮崎県知事の東国原英夫氏らが立候補を表明。東日本大震災に伴う計画停電が続くなかで静かな選挙戦の幕が開く。
選挙カー自粛
「国家破綻への危機感の故だ。東京が混乱し破綻することは国家の喪失につながりかねない」。11日午後、都議会で石原氏が4選出馬を表明したその直後に、巨大地震が東北や関東を襲った。
震災で選挙戦は一変した。神奈川県知事の松沢成文氏は出馬を撤回し、渡辺氏ら候補者も活動を一時停止した。各陣営は今後も派手な街頭演説や大規模な集会などは自粛し、選挙カーの使用も抑えるもようだ。
それでも今後4年間の首都のリーダーを決める選挙である。若年層の高い失業率、少子化への対応など東京は様々な課題を抱えている。2010年の国勢調査の結果をみると、東京23区の1世帯の平均人数が初めて2人を割り込んだ。都内では今後、高齢者の単身世帯が急増するが、その備えは十分ではない。社会資本の老朽化も深刻だ。
問われる防災力
首都・東京の防災力も問われる。都が防災対策で想定してきた地震はマグニチュード(M)7程度の首都直下地震。今回の東日本大震災はM9とさらに巨大だった。
都内の住宅のうち100万戸以上が耐震性に欠け、地震時に不安のある木造住宅密集地域は現在も区部面積の4分の1に相当する1万6000ヘクタールもある。湾岸部の液状化、帰宅困難者対策なども点検が必要だろう。
夏季五輪の招致に再挑戦するのかどうかなど、都政固有の問題もある。石原氏主導で設けた新銀行東京の今後も争点だ。同行の業績は改善しているが、都が資金、人材の両面で支える必要があるのかどうかは疑問だ。
一般論だが、多選知事のもとでは組織や人事が硬直化しやすく、政策を時代に合わせて見直すことも敬遠されがちだ。この点も今回の選挙では焦点になろう。
最も気になるのは勇退から一転して出馬表明した石原氏が、次の4年間に何をやりたいのか見えない点だ。震災対応に追われている面はあろうが、他候補と同様に早急にしっかりとした公約を示すべきだろう。
「首相に次ぐ」ともいわれる権限をもつ都知事のいす。五輪招致ひとつとっても賛成派の渡辺氏と反対派の東国原氏など候補者ごとに立場は異なるから「論戦なき選挙」はできれば避けたい。
長期化する計画停電、続く余震、食料や水の不安。選挙延期を見送った今回の国や都選挙管理委員会の判断は本当に正しかったのだろうか。
(編集委員 谷隆徳)