東電不手際、混乱に拍車 停電エリア資料間違い
東日本巨大地震で電力供給が低下したことを受け、14日からエリアを決めて順番に電力供給を止める「計画停電」。だが、東京電力側の説明は13日夜になっても二転三転。幹部らですら停電エリアなどの正確な情報を示せず、情報を周知するはずのホームページもパンクした。秩序だった「計画」という響きとは裏腹に、東電の不手際が混乱に拍車を掛ける形となった。
東京電力の清水正孝社長ら経営陣は計画停電の概要について、13日午後8時過ぎから記者会見。影響を受ける企業や個人にとっては一刻も早く知りたい情報だが、会見は実施前夜となり、開始時間も当初予定から約1時間半ずれこんだ。
会見の冒頭、同社幹部らは「停電は明朝から始まるので、しっかり報道していただきたい」と強調。しかし、報道陣に配られた停電エリアや時間帯を示す資料は、群馬県伊勢崎市や同県館林市を「埼玉県」や「栃木県」と表記するなど、間違いだらけ。東電側はこうした誤記について「ホームページに正確で詳しい情報を掲載した」と説明し、資料を差し替えないまま説明を続けた。
ところが数十分後、「東京23区のうち明日の停電エリアは荒川区の一部だけ」とした東電側の説明について、報道陣の一部が「ホームページでは世田谷区と目黒区の一部も対象になっている」と指摘すると、東電幹部は「すぐに説明できない」「手元に資料がない」などと混乱。結局約2時間半の会見中、確定的な情報が提示されることはなかった。
会見後、東電幹部は「ホームページは8割正しいが、一部載っていない地域もある」と説明。正確な情報を反映できていないことを認めた。
正確なデータを完全に反映した情報の提供は、計画停電が始まる14日午前6時20分にさえ間に合わない見込みだ。
計画停電は少なくとも4月いっぱいは続く見込みで、毎日、翌日の停電エリアや時間帯を公表するという。「正しい情報を提供してほしい」と迫る報道陣に対し、藤本孝副社長は「明日は、もっと早く予定を明らかにしたい」と話すのが精いっぱいだった。
13日深夜現在、計画停電の内容を掲載した同社ホームページ上にはアクセスが集中し、閲覧できない状態が継続。電話による問い合わせも集中し、つながりにくい状況となっている。
計画停電の実施が発表された13日夜、小田急電鉄の広報担当の女性社員は「ダイヤの混乱は避けられない」と慌てた様子。東電から連絡を受けて、急きょダイヤの変更に着手したが、「安全に運行できるダイヤを作るのは難解なパズルを解くような作業。どれくらいの時間がかかるのか」と頭を抱えた。
「停電すれば基本的に電車は動かない」。同日夜、東武鉄道の広報担当者も悲鳴を上げた。同社に独自の発電設備はなく、停電区間では運行できなくなる可能性が高い。東電に説明を求めているが、詳しい回答を得られないまま時間が過ぎていく。「このままでは毎日毎日、翌日の対応をバタバタと協議することになる。今からウンザリ」とため息をついた。
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