鳥インフル、トキ厳戒 限られる対策、現場困惑
各地で相次ぐ鳥インフルエンザの感染発覚を受け、国の特別天然記念物トキを飼育する佐渡トキ保護センター(新潟県佐渡市)は感染への警戒を強めている。ただ、効果的な予防策はなく、環境省や同センターは「どうすればいいのか」と困惑気味だ。感染が確認された場合の対応も不透明で、「まずは消毒を」と予防へ万全の対策を整えている。
同センターは昨年10月下旬に北海道稚内市でカモのフンからウイルスが検出されてからは一般車両の立ち入りを制限。公用車のタイヤ消毒も始めている。しかし、打つ手は限られており「あとは発生時のマニュアルを読むことぐらい」(担当者)という。
環境省は、感染が確認された場合は隔離して特定の職員が世話をすることなどを定めている。ただ、絶滅から人工繁殖、放鳥へと険しい道のりを経てきただけに、殺処分など具体的な方針は決めていない。
国内で飼育されているトキの8割以上にあたる約130羽が佐渡に集中している。佐渡に駐在する長田啓首席自然保護官は「感染の広がりや症状を見て判断することになるだろう」と話す。
同センターによると、「国内での発生なし」「国内で発生」「県内で発生」「島内で発生」の4段階に分けて、鳥インフルエンザへの具体的な予防策が決められている。今のところ新潟県内での感染は確認されていないが厳戒態勢を敷く。
感染症による全滅を防ぐためトキの分散飼育が進んでいるが、逆に各地の感染リスクにさらされる恐れも。分散飼育で1月22日に佐渡から2ペアが移送された島根県出雲市のトキ分散飼育センター。昨年12月の移送予定が安来市での鳥インフルエンザ発生で延期され、到着3日後の先月25日、今度は隣接する松江市で鳥インフルエンザが発生した。
佐渡のケースにあてはめれば、危険レベルが進んだ状態になり、市の担当者は「可能な限りの態勢で対策を徹底する」と話している。