新興国、利上げラッシュ ブラジルに続きインドも
資本流入でインフレ加速
【ムンバイ=黒沼勇史】新興国の利上げが相次いでいる。20日にブラジルが利上げしたのに続き、インドも25日、2010年春以降7回目となる利上げを決定、即日実施した。先進国から資本が流入している上に食品価格が上昇し沈静化しつつあった同国のインフレ圧力が再び高まり始めているためだ。ただ利上げが景気を冷やす懸念もあり、各国は経済成長と物価安定のはざまで難しいかじ取りを迫られている。
国・地域 (実施時期) | 主な内容 |
---|---|
中 国 (10年12月26日) | 金融機関の貸し出し・預金の基準金利(期間1年)を0.25%引き上げ、それぞれ5.81%・2.75%に |
台 湾 (31日) | 公定歩合を0.125%引き上げ1.625%に |
タ イ (11年1月12日) | 政策金利(翌日物レポ金利)を2%から2.25%に引き上げ |
韓 国 (13日) | 政策金利を0.25%引き上げ年2.75%に |
ポーランド (19日) | 政策金利を0.25%引き上げ年3.75%に |
ブラジル (20日) | 政策金利を0.5%引き上げ年11.25%に |
イスラエル (24日) | 政策金利を0.25%引き上げ2.25%に |
インド (25日) | レポ金利(政策金利)を0.25%引き上げ年6.5%に |
インド準備銀行(中央銀行)は25日、商業銀行への貸出金利であるレポ金利(政策金利)を0.25%引き上げ年6.50%とした。利上げは10年11月以来2カ月ぶり。金融危機後の利上げ回数は、ブラジルの4回目を上回り、主要新興国では最速ピッチとみられる。
主因はインフレ率の高止まり。卸売物価指数の上昇率が低下傾向を示し、準備銀は10年11月にいったん利上げ停止を宣言。12月は金利を据え置いた。しかし印政府が今月発表した12月分の同指数の上昇率は8.43%と再び高まり、準備銀は25日追加利上げを迫られた。
11年3月時点のインフレ率目標も従来の5.5%から7%に大幅に引き上げた。10年度(10年4月~11年3月)の実質国内総生産(GDP)成長率見通しは8.5%に据え置いた。
アジアの新興国などは通貨高への懸念から金融引き締めに動けず、名目金利から物価変動の影響を除いた実質金利がマイナスになるなど利上げの遅れが鮮明になっていた。
これに対し韓国が13日、金融危機後で3回目となる利上げを実施するなどの動きが相次ぎ始めた。国際的な食料価格上昇に加え、危機対応で引き下げた政策金利の正常化を進め、国によってはインフレ抑制に先手を打つ狙いもある。中国が2月初旬までに追加の利上げに踏み切るとの観測が広がるなど今後も新興国の引き締めが予想される。
ただ利上げは銀行の貸出金利の上昇を通じ、自動車・住宅ローンや企業の調達コストも引き上げ、個人消費や設備投資を減速させる懸念もある。25日の利上げが市場の事前予想通りだったインドでも、ムンバイ証券取引所の主要株価指数SENSEXは同日、利上げ発表後に反落。消費財銘柄や銀行株が売られ、前日比0.95%安の1万8969で引けた。