日本とサウジ、原子力の協力拡大で合意
日本企業の原発受注狙う
【リヤド=福士譲】日本とサウジアラビアの両政府は8日、原子力分野での協力拡大で合意した。大畠章宏経済産業相がサウジ担当閣僚と会談し、原子力協定などの締結に向けて協議を進めることを確認した。中東諸国は経済成長や人口増加、石油資源の温存をにらんで原子力発電所の導入を進めており、サウジも原発導入を検討中だ。政府はサウジとの協力をきっかけに中東へのインフラ輸出で攻勢を強める構えだ。
サウジを訪問中の大畠経産相は8日、原子力開発などを担当する「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市(KA-CARE)」のヤマニ総裁と会談した。経産相は「日本の原発は世界で最も安全」と語ったうえで、人材育成や原発導入でも協力する考えを伝えた。サウジへの協力拡大を通じて日本企業の原発受注を狙う。
ヤマニ総裁も「日本の技術力は高く、協力は互いにメリットがある」と応じた。両国政府はまず原子力協力文書を締結する見込みだ。
サウジは昨年4月にKA-CAREを設立し、原子力など非化石エネルギーの利用を進める方針を打ち出した。経済成長に伴う電力不足が深刻になるなか、地球温暖化対策にもつながる原発への関心が高まっており、石油を中心とするエネルギー政策を大きく転換する方針だ。
日本もサウジの原発導入に参加することで、原油輸入の約3割を依存するだけの不安定な関係を見直したい考え。上下水道など、水インフラ整備での技術供与も呼びかける方針で、政府が主導する「パッケージ型インフラ輸出」の実現につなげる。経産省もエネルギー面での関係強化は日本企業の中東進出を後押しするとみている。
中東では原発需要が急拡大している。いずれも経済成長に伴う電力需要の増加が背景にある。三菱総合研究所の滝沢真之主席研究員は「中東は原油を輸出に回し、その資金を基に原発建設などのインフラ整備を進めようとしている」と指摘。日本企業が受注を獲得する余地は大きいとみる。
ただ競合は厳しい。フランスやロシアなどは首脳によるトップセールスで中東での権益獲得に全力をあげている。日本はアラブ首長国連邦(UAE)の原発建設をめぐって、低価格と建設後の運転保証を売り物にした韓国に、受注を奪われた経緯もある。
それでも最近は追い風も吹きつつある。昨秋以降、ベトナム第2期工事の受注を獲得したほか、トルコではライバルの韓国を出し抜いて単独交渉する立場を得た。経産省は「高い技術力と人材育成の確かさなどへの評価は高まりつつある」として、国際競争での巻き返しに必死だ。
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