ムバラク大統領が不出馬表明 即時辞任は拒否
エルバラダイ氏「演説はまやかし」
【カイロ=花房良祐】退陣要求デモが続くエジプトのムバラク大統領は1日夜、国営テレビを通じて演説し、「平和的な権力の移譲を保証することが自分の最大の責任だ」と述べ、今年9月に予定されている次期大統領選挙への不出馬を表明した。独裁体制を30年近く維持してきた大統領は、連日の大規模デモで引退表明に追い込まれた。ただ野党側が求める即時辞任は拒否しており、事態の収拾につながるかは不透明だ。
1日にはエジプト全土で過去最大の100万人規模の抗議集会が開かれ、ムバラク氏の即時辞任を求めていた。ムバラク氏は演説で「国のためにキャリアを終える」と話した一方で、情勢の安定のために任期が切れる9月まで大統領職を続ける考えを示した。
ムバラク氏は「死ぬときは国土に眠る」とも述べ、野党勢力の出国要求も拒絶した。同日深夜、大統領の演説内容が伝わると、徹夜組のデモ隊が陣取るカイロ中心部では一部で抗議の声が上がった。
ムバラク氏は一方で民主化策も提示。大統領選への立候補要件の緩和や任期・当選回数に絡む憲法改正を実施すると話した。現憲法では無所属候補の出馬は人民議会などの議員計250人の推薦が必要で、ハードルが極めて高い。改憲で民主的な選挙に向け譲歩した格好だが、エルバラダイ国際原子力機関(IAEA)前事務局長は中東の衛星テレビ局に「演説はまやかしで、(大統領は)辞任が必要」と改めて批判した。
ムバラク氏は抗議デモについて「政治勢力に利用されている」と指摘。辞任を前提条件として対話を拒絶する野党を批判し、改めて政権との交渉を呼びかけた。
1日の演説前にムバラク氏はウィズナー米特使(元駐エジプト大使)と会談。ロイター通信によると、米国は「秩序ある権力の移行」を望んでおり、大統領の演説には米国の意向が反映されていることがうかがえる。ただエジプト国民が不出馬表明で納得する公算は小さく、抗議デモが今後も続く可能性は否めない。